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This Week at NEJM.org
NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.
May 26, 2005
Vol. 352 No. 21
ORIGINAL ARTICLE
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慢性喘息の治療指針としての呼気中一酸化窒素濃度の利用
Use of Exhaled Nitric Oxide Measurements to Guide Treatment in Chronic Asthma吸入副腎皮質ステロイドを用いた適切な喘息管理には,患者の治療必要性に合せた用量の調節が必要である.この研究で著者らは,喘息治療に関する通常のガイドラインに基づいたレジメンと,呼気中一酸化窒素濃度の測定に基づいたレジメンの,2 つのレジメンで治療を行った群を比較した.後者では,前者よりも少ない用量の吸入副腎皮質ステロイドで,同等レベルの喘息管理が維持された.
呼気中一酸化窒素濃度の測定は,喘息管理における有用な方法と思われる. -
ステント留置術後と CABG 後の長期死亡率の比較
Long-Term Mortality after CABG versus after Stentingこの研究は,ニューヨーク州の 2 つの大規模な心疾患患者登録から得られたデータを用い,多枝冠動脈疾患患者を対象として,冠動脈バイパス術(CABG)を受けた群と冠動脈ステント留置術を受けた群とで 3 年生存率を比較した.生存率は,CABG 群で一様に優れていた.この研究は無作為化されていないが,多枝冠動脈疾患患者に対する血行再建術を選択するうえで重要な意味をもつ.
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スタチンと大腸癌のリスク
Statins and the Risk of Colorectal Cancer大腸癌患者 1,953 例と,マッチさせた対照群 2,015 例に関するこの症例対照研究において,スタチン療法に関連して大腸癌のリスクが約 50%減少した.結果は,非ステロイド性抗炎症薬の使用の有無;身体活動,高コレステロール血症,大腸癌の家族歴の有無;食事で補正した解析においても同様であった.
症例 1 例を予防するためにはおそらく多数の患者が治療を受ける必要があるが,この後ろ向き研究は,スタチンの使用により大腸癌のリスクが低下する可能性があることを示唆している.他にスタチン治療の適用のない患者でスタチンを使用することによる利益とリスクは,まだ明らかされていない. -
活動性クローン病に対するサルグラモスチム
Sargramostim for Active Crohn's Diseaseこの無作為試験では,サルグラモスチム(組換え型顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)は,プラセボと比較して,臨床反応に関する主要転帰(クローン病活動指数 [CDAI] のベースライン時からの 70 ポイント以上の低下)の達成率が有意に高いということはなかった.しかし,サルグラモスチムは,寛解率(CDAI スコアが 150 以下と定義)を含む副次転帰指標に有意な改善をもたらす可能性は高かった.サルグラモスチム療法を受けた患者では,注射部位反応と骨痛が多くみられ,うち 3 例に重篤な有害事象がみら れた.
SPECIAL ARTICLE
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企業との臨床試験契約に関する基準
Standards for Clinical-Trial Agreements with Industry107 の医科大学を対象としたこの調査から,企業との臨床試験契約の基準は施設間で異なることが明らかにされた.施設の 93%は,結果を公表すべきでないことを決定する権利をスポンサーに与える契約条項を認めていないが,スポンサーが原稿を作成すること(50%)や,独自の統計解析を原稿に加えること(24%)が可能であると明記した条項については,かなりの割合が認めている.著者らは,医科大学に対し,企業との臨床試験契約に関する基準を作成するよう求めている.
DRUG THERAPY
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患者ごとの薬物反応の違い
Variability among Patients in Drug Response患者ごとに薬物反応が異なるのは一般的なことであるが,多くの場合,個々の患者に対して最適な投与計画を決定するさいに問題となる.最近の進展から,薬物の体内動態にみられる多くの患者の個人差とその臨床的帰結の解明に向けた,合理的な枠組みが得られている.この論文では,酸化的薬物代謝に重要な役割を果すミクロソーム内薬物代謝酵素のスーパーファミリーの一員である,チトクローム P-450 酵素に焦点が当てられている.
CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL
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頭痛と高血圧を呈する女児
A Girl with Headaches and Hypertension9 歳の女児が頭痛,乳頭浮腫,視覚変化,嘔吐のため入院した.頭痛は入院の 18 ヵ月前,遺尿は入院の 9 ヵ月前に始り,その後視力の低下が始った.神経科医により両眼の乳頭浮腫が発見された.入院時の血圧は 210/130 mmHg であった.小児集中治療医と小児腎臓専門医が,高血圧を有する小児の緊急治療と診断評価について論じている.
CLINICAL IMPLICATIONS OF BASIC RESEARCH
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子宮内膜症と卵巣癌のモデル作製
Modeling Endometriosis and Ovarian Cancer子宮内膜症と卵巣類内膜癌の発生の解明に役立つ,2 種類の新しいモデルマウスが開発された.これらのモデルから,卵巣類内膜癌の治療のための薬剤が考案され,それらを試験するための手段が得られる.