November 12, 1998 Vol. 339 No. 20
症候性の中等度または重度狭窄患者における頸動脈内膜切除の有用性
BENEFIT OF CAROTID ENDARTERECTOMY IN PATIENTS WITH SYMPTOMATIC MODERATE OR SEVERE STENOSIS
H.J.M. BARNETT AND OTHERS
これまでの試験から,症候性の重度頸動脈狭窄患者(血管内径の 70~99%の狭窄として定義)に頸動脈内膜切除を行うと,術後 2 年までは有益であることが示されている.この臨床試験において,われわれは,70%未満の狭窄として定義する症候性の中等度狭窄患者における頸動脈内膜切除の有用性を評価した.また 8 年の追跡期間での重度狭窄患者における動脈内膜切除の有用性の持続についても調べた.
試験登録前の 180 日以内に狭窄と同じ側(同側)に一過性の虚血性発作または障害の残らない卒中発作を起した中等度頸動脈狭窄患者を,狭窄の程度に従って分類し(50~69%,または<50%),頸動脈内膜切除(1,108 人),または内科治療のみ(1,118 人)のいずれかを行うように無作為割付けした.平均追跡期間は 5 年で,転帰イベントに関する完全なデータは患者の 99.7%に関して入手できた.一次転帰イベントは,無作為化を行った狭窄と同側に発生した致死的または非致死的卒中発作であった.
50~69%の狭窄患者では,同側の何らかの卒中発作の 5 年発生率(失敗率)は,外科的に治療した患者で 15.7%,そして内科的に治療した患者で 22.2%であった(p = 0.045); 5 年間で 1 回の同側卒中発作を予防するためには,患者 15 人を頸動脈内膜切除で治療する必要がある.狭窄が 50%未満の患者では,失敗率は,動脈内膜切除で治療した群(14.9%)では,内科的に治療した群(18.7%,p = 0.16)より有意に低くはなかった.動脈内膜切除を行った重度狭窄患者では,死亡または 90 日目で持続している障害の残る同側性発作の 30 日発生率は 2.1%で; この発生率は 8 年目でも 6.7%に増加したにすぎなかった.効果は,男性,試験適格イベントとして最近に発作を起した患者,そして脳半球性症状を有する患者で最大であった.
症候性の 50~69%の中等度頸動脈狭窄患者における動脈内膜切除は,卒中発作のリスクを中等度に減少させたにすぎなかった.この分類に入る患者の治療を決定するためには,認められている危険因子を考慮に入れなければならず,頸動脈内膜切除を行うことになれば,特殊な外科的熟練が不可欠である.50%未満の狭窄患者は手術によって利益が得られなかった.重度狭窄(≧70%)患者は,追跡期間の 8 年目においても動脈内膜切除によって持続的な利益が得られた.