December 16, 1999 Vol. 341 No. 25
家庭内暴力によって女性が受ける傷害の危険因子
Risk Factors for Injury to Women from Domestic Violence
D.N. KYRIACOU AND OTHERS
米国では,家庭内暴力が,女性に対する非致死的な傷害のもっとも一般的な原因になっている.そこで,このような傷害の危険因子を同定することを目的として,われわれは,家庭内暴力の犠牲となった女性と,それらの女性に傷害を負わせた男性の社会経済学的および行動学的な特性を調査した.
今回の症例対照研究は,八つの大規模な大学病院の救急部門において実施した.故意に傷つけられた 256 例の女性は,男性パートナーから肉体的暴行を受けたための急性傷害を負っていた.対照の 659 例は,これらの救急部門で,このような傷害以外の身体症状で治療を受けた女性であった.情報の収集は,標準化されている質問票を用いて行った;どのような情報も,直接,男性パートナーからは収集しなかった.
故意に傷つけられた 256 例の女性には,合計で,434 ヵ所の打撲傷および擦過傷,89 ヵ所の裂傷,および 41 ヵ所の骨折および脱臼があった.多変量解析では,家庭内暴力の結果として傷害を負わせるというリスクの上昇にもっとも密接に関連していたパートナーの特性は,アルコール中毒(補正相対危険度,3.6; 95%信頼区間,2.2~5.9); 薬物使用(補正相対危険度,3.5; 95%信頼区間,2.0~6.4); 断続的な雇用(補正相対危険度,3.1; 95%信頼区間,1.1~8.8); 最近の失業(補正相対危険度,2.7; 95%信頼区間,1.2~6.5); 高校未満の教育水準(補正相対危険度,2.5; 95%信頼区間,1.4~4.4); および前夫,仲違いをしている夫,または前の男友達(補正相対危険度,3.5; 95%信頼区間,1.5~8.3)であった.
家庭内暴力によって傷害を負わされるリスクがもっとも高い女性としては,そのパートナーの男性が,アルコール中毒や薬物使用,失業あるいは不定期雇用,高校未満の教育,そして,前夫,仲違いをしている夫,あるいは前の男友達であった.