December 16, 1999 Vol. 341 No. 25
ある都市部の女性における暴力傷害
Violent Injuries among Women in an Urban Area
J.A. GRISSO AND OTHERS
米国では,暴行傷害による死亡率が,白人女性よりも黒人女性で高いが,都市部に住む黒人女性の暴力による傷害の実態とその関連要因についてはほとんどわかっていない.
都市中心部のコミュニティ(西部フィラデルフィア)にある三つの救急部門において実施した今回の症例対照研究では,故意に傷害を負わされた青年期の少女と成人女性 405 例と,暴力による傷害とは無関係の健康問題を抱えていた青年期の少女と成人女性 520 例(対照被験者)を対象として検討した.データの収集は,質問票を用いた標準化された面接と,違法薬剤の尿スクリーニングによって行った.犠牲者のパートナーから受けた暴力による傷害の関連要因と,パートナー以外の人物から受けた暴力による傷害の関連要因を同定するために,別個のロジスティック回帰モデルを構築した.
傷害を負わされた女性の男性パートナーは,対照被験者の男性パートナーよりも,コカインを使用しており(オッズ比,4.4;95%信頼区間,2.3~8.4),投獄経験も高いようであった(オッズ比,3.1;95%信頼区間,1.8~5.2).女性が受けた暴力傷害の 53%は,そのパートナー以外の人物から受けたものであった.女性側の違法薬剤の使用とアルコール中毒は,パートナーからの暴力とパートナー以外の人物からの暴力の両方に関連した要因であった.また,近隣者の,所得の中央値が低い,転居率が高い,および教育水準が低いなどといった特性にも,女性が暴力による傷害を受けるリスクとの独立した関連が認められた.
今回検討した都市の低所得地域社会に住む女性は,パートナーとパートナー以外の人物の両者からの暴力に直面している.薬物乱用,とくにコカインの使用は,暴力による傷害と有意に相関した.女性がこうした暴力を受けるリスクが高く,コミュニティレベルの介入が有益であるような地域を同定する上で,標準的な国勢調査のデータが役立つかもしれない.