健常男性において寒冷条件下で活性化される褐色脂肪組織
Cold-Activated Brown Adipose Tissue in Healthy Men
W.D. van Marken Lichtenbelt and Others
動物実験から,褐色脂肪組織は体重調節において重要であり,また,適応性熱産生の個体差は褐色脂肪組織の量や活性の違いによる可能性が示唆されている.最近まで,褐色脂肪組織の存在は,小型哺乳類や乳児にのみ意義があり,成人における生理的意義はほとんどないと考えられていた.われわれは,非肥満男性と肥満男性を対象に,寒冷曝露下における褐色脂肪組織の有無,分布,活性について系統的検討を行った.褐色脂肪組織の活性は,身体組成とエネルギー代謝との関連で検討した.
健常男性 24 例について,適温環境下(22℃)と軽度寒冷曝露下(16℃)で検討した.内訳は,体格指数(BMI,体重 [kg]/身長 [m]2)が 25 未満の非肥満男性 10 例と,25 以上の過体重・肥満の男性 14 例であった.褐色脂肪組織の推定活性は,18F-フルオロデオキシグルコース PET/CT を用いて評価した.身体組成とエネルギー消費は,二重エネルギー X 線吸収法と間接熱量測定法を用いて測定した.
褐色脂肪組織の活性は,寒冷曝露下で 24 例中 23 例(96%)に観察されたが,適温環境下では観察されなかった.活性は,過体重・肥満男性のほうが,非肥満男性に比べ有意に低かった(P=0.007).BMI と体脂肪率はともに褐色脂肪組織の活性と有意な負の相関を示し,一方,安静時代謝率は褐色脂肪組織の活性と有意な正の相関を示した.
褐色脂肪組織を有する若年男性の割合は高いが,その活性は過体重・肥満の男性では低下している.褐色脂肪組織は,男性の代謝に重要であると考えられ,また過体重・肥満男性の大部分で活性は低下しているものの依然存在しているという事実から,肥満治療の標的となる可能性がある.