米国陸軍兵士における鎌状赤血球形質と横紋筋融解症,死亡との関連
Sickle Cell Trait, Rhabdomyolysis, and Mortality among U.S. Army Soldiers
D.A. Nelson and Others
鎌状赤血球形質によって労作性横紋筋融解症リスクと死亡リスクが上昇することが複数の研究で示唆されている.われわれは,鎌状赤血球形質とこの 2 つの転帰との関連を,ヘモグロビン AS(HbAS)臨床検査を実施済みで訓練による疾患・障害の予防対策がとられている身体活動量の多い大規模集団で,労作性横紋筋融解症の既知の危険因子を管理しながら検討した.
米国陸軍で HbAS 検査を受けており,2011 年 1 月~2014 年 12 月に現役であった黒人兵士 47,944 人で,鎌状赤血球形質の有無によって労作性横紋筋融解症リスクと死亡リスクが変化するかどうかを,Cox 比例ハザードモデルを用いて検証した.全現役兵の包括的な医療・行政データが登録されている,スタンフォード軍事データリポジトリを利用した.
鎌状赤血球形質を有する人と有しない人との比較で,死亡リスクに有意差は認められなかったが(ハザード比 0.99,95%信頼区間 [CI] 0.46~2.13,P=0.97),鎌状赤血球形質を有する場合,労作性横紋筋融解症の補正リスクが有意に高いことに関連し(ハザード比 1.54,95% CI 1.12~2.12,P=0.008),その関連の強さは,過去 6 ヵ月以内に喫煙歴がある場合(ハザード比 1.54,95% CI 1.23~1.94,P<0.001),および体格指数(BMI,体重 [kg] を身長 [m]の 2 乗で除した値)が 30.0 以上の場合(BMI 25.0 未満に対するハザード比 1.39,95%CI 1.04~1.86,P=0.03)と同程度であり,スタチンの最近の使用歴がある場合(ハザード比 2.89,95% CI 1.51~5.55,P=0.001),または抗精神病薬の最近の使用歴がある場合(ハザード比 3.02,95% CI 1.34~6.82,P=0.008)よりも小さかった.
鎌状赤血球形質を有する場合,有しない場合と比較して,死亡リスクが高いことには関連しなかったが,労作性横紋筋融解症リスクが有意に高いことに関連した.(米国国立心臓・肺・血液研究所,米国軍保健科学大学から研究助成を受けた.)