December 28, 2023 Vol. 389 No. 26
乳児の RS ウイルスによる入院の予防を目的としたニルセビマブ
Nirsevimab for Prevention of Hospitalizations Due to RSV in Infants
S.B. Drysdale and Others
モノクローナル抗体ニルセビマブ(nirsevimab)を,健康な乳児に投与した場合の安全性と,RS ウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)関連下気道感染症による入院に対する防御効果は明らかにされていない.
フランス,ドイツ,英国で行われた実用的試験で,在胎 29 週以上で出生し,最初の RSV 流行期を迎える生後 12 ヵ月以下の乳児を,RSV の流行期前または流行期中にニルセビマブの単回筋肉内注射を行う群と,標準ケア(介入なし)を行う群に,1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは RSV 関連下気道感染症による入院とし,入院し,検査で RSV 陽性が確認されることと定義した.重要な副次的エンドポイントは最重症の RSV 関連下気道感染症とし,酸素飽和度 90%未満で,酸素投与が必要な RSV 関連下気道感染症による入院と定義した.
計 8,058 例が,ニルセビマブ群(4,037 例)と標準ケア群(4,021 例)に無作為に割り付けられた.RSV 関連下気道感染症による入院は,ニルセビマブ群では 11 例(0.3%),標準ケア群では 60 例(1.5%)に発生し,ニルセビマブの有効率は 83.2%(95%信頼区間 [CI] 67.8~92.0,P<0.001)であった.最重症の RSV 関連下気道感染症は,ニルセビマブ群では 5 例(0.1%),標準ケア群では 19 例(0.5%)に発生し,ニルセビマブの有効率は 75.7%(95% CI 32.8~92.9,P=0.004)であった.RSV 関連下気道感染症による入院に対するニルセビマブの有効率は,フランスでは 89.6%(補正後の 95% CI 58.8~98.7,多重性を補正後の P<0.001),ドイツでは 74.2%(補正後の 95% CI 27.9~92.5,多重性を補正後の P=0.006),英国では 83.4%(補正後の 95% CI 34.3~97.6,多重性を補正後の P=0.003)であった.治療関連有害事象は,ニルセビマブ群の 86 例(2.1%)に発現した.
ニルセビマブは,実社会に近い環境で,乳児の RSV 関連下気道感染症による入院と,最重症の RSV 関連下気道感染症を防御した.(サノフィ社,アストラゼネカ社から研究助成を受けた.HARMONIE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05437510)