術後放射線療法は，乳房温存手術後に，局所再発リスクを減らすために行われる．しかし，放射線療法は短所も多く，高額で，短期・長期両方の副作用を伴う．局所再発リスクが低ければ放射線療法を省略することができるが，そのような女性の同定を臨床病理学的因子のみで行うことの有用性は限られている．分子的に定義された乳癌の内因性サブタイプから，さらなる予後情報が得られる可能性がある．

T1N0（腫瘍径 2 cm 未満，リンパ節転移陰性），グレード 1 または 2 の，ルミナル A 型乳癌（定義はエストロゲン受容体陽性率 1%以上，プロゲステロン受容体陽性率 20%超，ヒト上皮成長因子受容体 2 陰性，Ki67 指数 13.25%以下）に対して乳房温存手術を受け，術後に内分泌療法を受けた，55 歳以上の女性を対象に前向きコホート研究を行った．臨床的適格基準を満たした患者を登録し，中央で Ki67 の免疫組織化学的解析を行った．Ki67 指数が 13.25%以下の患者を組み入れ，放射線療法を行わなかった．主要転帰は同側乳房における局所再発とした．放射線腫瘍医と乳癌患者に相談し，5 年の時点での累積発生率の両側 90%信頼区間の上限が 5%未満であれば，5 年局所再発リスクとして許容可能とした．

登録された 740 例のうち，適格患者 500 例を組み入れた．組入れ後 5 年の時点で，再発が報告されたのは患者の 2.3%（90%信頼区間 [CI] 1.3～3.8，95% CI 1.2～4.1）であり，事前に規定した境界に達した．対側乳癌は患者の 1.9%（90% CI 1.1～3.2）に発生し，すべての再発は 2.7%（90% CI 1.6～4.1）に発生した．

55 歳以上の，T1N0，グレード 1 または 2 のルミナル A 乳癌を，乳房温存手術と内分泌療法のみで治療した女性において，放射線療法の省略による 5 年局所再発率は低かった．（カナダがん協会， カナダ乳がん財団から助成を受けた．LUMINA 試験：ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01791829）