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August 17, 2023 Vol. 389 No. 7

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クリグラー–ナジャー症候群患者に対する遺伝子治療
Gene Therapy in Patients with the Crigler–Najjar Syndrome

L. D’Antiga and Others

背景

クリグラー–ナジャー症候群患者では,ウリジン二リン酸グルクロン酸転移酵素 1A1(UGT1A1)が欠損している.その欠損により,重度の非抱合型高ビリルビン血症をきたし,不可逆的な神経障害,死亡にいたる可能性がある.長期にわたる毎日の光線療法によって黄疸は部分的にコントロールされるが,唯一の根治的治療法は肝移植である.

方 法

光線療法を受けているクリグラー–ナジャー症候群患者を対象に,UGT1A1 をコードするアデノ随伴ウイルスベクター血清型 8 の単回点滴静注の安全性と有効性を評価する第 1・2 相試験の,用量漸増パートの結果を報告する.5 例にこの遺伝子構成体(GNT0003)の単回点滴静注を行った.2 例に 2×1012 ベクターゲノム(vg)/kg 体重を投与し,3 例に 5×1012 vg/kg を投与した.主要エンドポイントは安全性と有効性の指標とし,有効性は,投与後 17 週の時点で測定した血清ビリルビン値 300 μmol/L 以下と定義した.投与後 17 週は,光線療法中止後 1 週にあたる.

結 果

重篤な有害事象は報告されなかった.とくに頻度の高かった有害事象は,頭痛と肝酵素値の変化であった.4 例ではアラニンアミノトランスフェラーゼが正常範囲の上限を上回り,投与したベクターに対する免疫応答に関連する可能性を示す知見であった.この 4 例にはグルココルチコイドによる治療を 1 コース行った.投与後 16 週までに,低用量の GNT0003 を投与された患者では,血清ビリルビン値が 300 μmol/L を超えた.高用量の GNT0003 を投与された患者では,追跡期間終了時に,血清ビリルビン値は 300 μmol/L 未満であり,光線療法は行われていなかった(ビリルビン値の平均 [±SD] は,ベースライン時に 351±56 μmol/L,最終追跡調査時 [2 例は投与後 78 週,もう 1 例は 80 週] に 149±33 μmol/L).

結 論

この小規模試験では,ベクター GNT0003 による遺伝子治療を行った患者に,重篤な有害事象は報告されなかった.高用量のベクターを投与された患者では,投与後 78 週以上経過した時点でビリルビン値は低く,光線療法を受けていなかった.(ジェネトン社ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03466463)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 620 - 31. )