November 13, 1997 Vol. 337 No. 20
紫外線によって誘発された早発型皮膚老化の病理生理学
PATHOPHYSIOLOGY OF PREMATURE SKIN AGING INDUCED BY ULTRAVIOLET LIGHT
G.J. FISHER AND OTHERS
太陽光線による紫外線照射に長期間曝されると,しわ,色素沈着の変化,そして皮膚緊張の喪失を特徴の一部とする早発型皮膚老化(光線老化)が起る.光線老化皮膚は,結合組織のコラーゲン様細胞外マトリクスに著しい変化を示す.われわれは,蛋白溶解酵素ファミリーであるマトリクス崩壊メタロプロテイナーゼの,光線老化におけるコラーゲン損傷のメディエーターとしての役割を調べた.
軽度から中等度の色素沈着を示し,現在または過去に皮膚疾患を有しない白人 59 人(男性 33 人および女性 26 人,年齢の範囲,21~58 歳)を調べた.各試験に参加したのはそのうちの数人にすぎなかった.標準条件下で臀部の皮膚に蛍光紫外線光を照射し,ケラトームまたはパンチ生検によって照射または非照射領域から皮膚サンプルを得た.いくつかの試験では,紫外線照射 48 時間前にトレチノインおよびその基質を皮膚に密封塗布した.マトリクスのメタロプロテイナーゼ発現は,in situ ハイブリダイゼーション,免疫組織学,および in situ 電気泳動像によって定量した.放射線照射による皮膚コラーゲンの分解は,可溶性クロスリンクテロペプチドのラジオイムノアッセイによって測定した.1 型マトリクスメタロプロテイナーゼの組織阻害物質の蛋白レベルは,ウェスタンブロット分析によって定量した.
1 回の紫外線照射により,皮膚結合組織と外側の皮膚層では,三つのマトリクスメタロプロテナーゼ,コラゲナーゼ,92-kd ゲラチナーゼ,そしてストロメルシンの発現が非照射皮膚と比較して増加した.内因性 1 型コラーゲン原線維の分解は,非照射皮膚と比較して照射皮膚では 58%増加した.コラゲナーゼとゲラチナーゼ活性は,紫外線照射を 2 日間隔で 4 回行った 7 日間では,ベースライン値と比較して最大上昇したままであった(それぞれ 4.4 および 2.3 倍).皮膚をトレチノイン(オールトランスレチン酸)で前処置すると,マトリクスのメタロプロテイナーゼ蛋白および活性の誘導は,照射皮膚の結合組織および外側の層のいずれにおいても(70~80%)抑制された.紫外線照射も同様に,この酵素を制御するマトリクスのメタロプロテイナーゼ-1 の組織阻害物質を誘導した.阻害物質の誘導はトレチノインによって影響を受けなかった.
紫外線照射への複数回の曝露は,皮膚コラーゲンを分解するマトリクスメタロプロテイナーゼを持続的に上昇させ,光線老化に寄与する可能性がある.トレチノインによる局所治療は,照射誘導マトリクスメタロプロテイナーゼを抑制するが,その内因性阻害物質は抑制しない.