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January 22, 1998 Vol. 338 No. 4

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慢性裂肛の治療におけるボツリヌス毒素と生理食塩液の比較
A COMPARISON OF BOTULINUM TOXIN AND SALINE FOR THE TREATMENT OF CHRONIC ANAL FISSURE

G. MARIA AND OTHERS

背景

慢性裂肛は,内肛門括約筋の収縮によって維持される肛門の下位半分における裂傷であるもっとも広く用いられている治療である括約筋切開術は,内括約筋を永久的に弱める手術法であり,これにより肛門の変形および便失禁が起る可能性がある.

方 法

われわれは,一連の症状のある成人 30 人の慢性裂肛の治療に関するボツリヌス毒素の二重盲検プラセボ対照臨床試験を実施した.患者全員に対し,内肛門括約筋内に 2 回(総容量,0.4 mL)注射した;治療群(患者 15 人)にはボツリヌス毒素 A の 20 U を投与し,対照群(患者 15 人)には生理食塩液を投与した.裂肛の治癒(瘢痕形成)を成功と定義し,症状の改善は,症状を伴わない持続的裂傷の存在として定義した.

結 果

2 ヵ月後,治療群の患者 11 人および対照群の患者 2 人の裂傷が治癒した(p=0.003);治療群の患者 13 人および対照群の患者 4 人では,症状の軽減を認めた(p=0.003).最大随意圧は両群についてベースライン値と同程度で,安静時肛門圧は治療群では 25%減少したが,対照群では減少しなかった.対照群の患者 3 人がその後括約筋切開術を受け,10 人にボツリヌス毒素(20 U)を注射した.後者のうち,7 人では 2 ヵ月後に裂傷が治癒したが残る 3 人は試験への参加をやめて手術を受けた.治療群では患者 4 人が後に(ボツリヌス毒素 25 U による)再治療を受けた;2 ヵ月後,全員の裂傷が治癒した.対照群の患者 1 人がボツリヌス毒素による治療後に一時的なガス失禁を示した.平均 16 ヵ月間の追跡調査では再発は起らなかった.

結 論

内肛門括約筋へのボツリヌス毒素の局所注入は慢性裂肛の有効な治療である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 338 : 217 - 20. )