January 22, 1998 Vol. 338 No. 4
心臓の拍動が停止したドナーからの腎臓移植
TRANSPLANTATION OF KIDNEYS FROM DONORS WHOSE HEARTS HAVE STOPPED BEATING
Y.W. CHO, P.I. TERASAKI, J.M. CECKA, AND D.W. GJERTSON
最近,心臓が拍動している脳死ドナーからの腎臓に加えて,心拍のないドナーからの腎臓を用いることによって,移植に利用できる死体腎の数を増やす試みがなされている.われわれは,全米臓器分配ネットワークの腎臓移植登録(the Kidney Transplant Registry of the United Network for Organ Sharing)からの集合データに基づき,心拍のないドナーの腎臓を移植する有効性を検討した.
心拍のある死体ドナーからの腎臓グラフト 8,718 個と,心拍のないドナーからのグラフト 229 個の初期機能と生着率を比較した.移植はすべて米国内の 64 の移植センターで実施した.Cox 比例ハザード分析を用いて,移植失敗の主な 10 の危険因子を評価した.
1 年生着率は,心拍のないドナーからの腎臓グラフトについて 83%,これに対し心拍のあるドナーからのグラフトでは 86%であった(p=0.26).心拍のないドナーからの腎臓では,外傷のために死亡したドナーからのグラフトの 1 年生着率は 89%であったのに対し,その他の原因により死亡したドナーからのグラフトでは 78%であった(p=0.04).心拍のないドナーからのグラフトでは初期機能が劣っているにもかかわらず,これらのグラフトの生着率は高かった.すなわち移植後最初の 1 週間に透析を必要としたレシピエントは 48%であり,これに対し心拍のあるドナーからのグラフトのレシピエントでは 22%であった.心拍のないドナーからの腎臓の一次的な移植失敗率は 4%であったのに対し,心拍のあるドナーからの腎臓では 1%であった.
心臓の拍動が停止したドナー,とくに外傷のために死亡したドナーからの腎臓の移植は,しばしば成功し,そのようなドナーからの腎臓を利用すれば,死体腎移植の全体的な供給量を増加させることが可能である.