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November 4, 1999 Vol. 341 No. 19

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多剤耐性かつキノロン耐性 Salmonella enterica,血清型 Typhimurium DT104 の流行
An Outbreak of Multidrug-Resistant, Quinolone-Resistant Salmonella enterica Serotype Typhimurium DT104

K. MOBAK AND OTHERS

背景

食物によって引き起されるサルモネラ感染症は,工業国において大きな問題になってきている.固有ファージタイプが 104(DT104)として知られている血清型が typhimurium の Salmonella enterica 株は,一般に,次の五つの薬剤に対して耐性化している:アンピシリン,クロラムフェニコール,ストレプトマイシン,スルホンアミド,およびテトラサイクリン.さらに,フルオロキノロンに対する感受性が低下している DT104 分離株の割合も増加してきている.

方 法

デンマークのサルモネラ監視プログラムでは,食物連鎖におけるすべての typhimurium 株のファージタイプを決定し,流行が疑われた場合には,その 5 剤耐性株の特徴を分子学的な方法によって調べている.5 剤耐性 typhimurium に感染した患者については,その全例に問診を行って,臨床および疫学データを入手している.1998 年にサルモネラの大流行があったが,デンマークでは,このときにはじめて typhimurium DT104 株が発見された.今回,われわれは,この流行についての調査を行ったので,その結果を報告する.

結 果

DT104 による感染症は,1997 年までは,ヒトのサルモネラ感染症全体の 1%にも満たなかった.1998 年にデンマークで発生した TD104 の市中でのはじめての流行において患者から分離された臨床分離株は,ナリジクス酸に抵抗性を示し,フルオロキノロンに対する感受性も低下していた.この流行には,菌培養で TD104 が確認された患者が 25 例含まれていた.11 例の患者が入院し,2 例が死亡した.分子疫学と患者から収集したデータによって,この第一感染源が養豚業を営む 1 人のデンマーク人であることがわかった.さらに,今回の調査では,フルオロキノロンによる治療の臨床効果が低下していることも示唆された.

結 論

DT104 の流行に関する今回の調査において,キノロン耐性菌が食肉動物からヒトに伝播したことが証明された; この伝播は難治性の感染症に関連していた.サルモネラ菌においてキノロンに対する耐性化が増大していることから,食用動物におけるフルオロキノロンの使用を制限すべきである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 1420 - 5. )