April 27, 2000 Vol. 342 No. 17
畜牛から子供に伝播したセフトリアキソン耐性サルモネラ感染症
Ceftriaxone-Resistant Salmonella Infection Acquired by a Child from Cattle
P.D. FEY AND OTHERS
サルモネラ菌における抗菌薬に対する耐性化の出現は,家畜類での抗生剤の使用に関連した世界的な問題である.侵襲性のサルモネラ感染症の治療に使用されているセフトリアキソンとフルオロキノロンに対する耐性化は,米国ではまれである.今回,われわれは,発熱,腹痛,および下痢が発現した 12 歳の少年から分離された血清型が typhimurium(ネズミチフス)の Salmonella enterica(腸炎菌)のセフトリアキソン耐性株について,その分子学的特性を分析した.
パルスフィールドゲル電気泳動法と,プラスミドと β-ラクタマーゼの分析を用いて,この少年から分離された typhimurium(ネズミチフス)血清型のセフトリアキソン耐性 S. enterica と,ある地域にサルモネラ症が流行したときに蓄牛から得られた四つの S. enterica 株との比較を行った.
この少年から分離されたセフトリアキソン耐性株は,蓄牛から分離された株の 1 株と区別することができなかったが,この蓄牛からの分離株もセフトリアキソンに耐性であった.この二つのセフトリアキソン耐性分離株は,13 種類の抗菌薬に耐性を示した;一つを除くすべての耐性決定子が,機能分類 1 群に属するβ-ラクタマーゼ CMY-2 をコードしている 160 kb の接合性プラスミド上に存在していた.また,この二つのセフトリアキソン耐性分離株は,蓄牛から分離された他の三つのサルモネラ菌と密接な関連が認められたが,この三つのすべての分離株は,セフトリアキソンに対して感受性があった.
今回の試験は,米国のサルモネラ菌の抗生剤耐性株が主に家畜において進化しているということを示す根拠を追加する.セフトリアキソンに対する耐性菌の出現は,この薬剤が侵襲性のサルモネラ疾患の選択薬であることから,公衆衛生の問題である.とくに小児の場合には,この疾患に治療薬に使用できるもう一つの薬剤であるフルオロキノロンが,小児での使用を認められていないために,さらに大きな問題である.