January 20, 2000 Vol. 342 No. 3
白内障手術前の一般的術前医学検査の価値
The Value of Routine Preoperative Medical Testing before Cataract Surgery
O.D. SCHEIN AND OTHERS
白内障手術が予定されている患者には,普通,一般的な術前医学検査が行われているが,このような検査の価値については明らかにされていない.今回,われわれは,この一般的な検査が術中および術後の医学的な合併症の発生を減少させるのに役立っているかどうかを確認するための試験を実施した.
九つの医療センターで 18,189 例の患者に行われた 19,557 件の白内障の待期手術を,病歴の問診と理学的検査に加えて,標準的な一連の医学検査(心電図検査,血算,および電解質,尿素窒素,クレアチニン,およびブドウ糖の血清中濃度の測定)を術前に実施する手術,あるいは術前に実施しない手術に無作為に割り付けた.手術当日および術後 7 日間に発生した有害な医学的事象および介入について記録した.
医学的転帰の評価は,一般的な検査を術前に実施しなかった 9,626 件の白内障の手術を受けた 9,408 例の患者,および一般的な検査を術前に実施した 9,624 件の白内障の手術を受けた 9,411 例の患者において行った.両群においてもっとも多くみられた医学的事象は,血圧上昇および不整脈(主に徐脈)の治療であった.合併症の全発生率(術中および術後に発生した事象を合わせた発生率)は,2 群で同程度であった(手術 1,000 件当り 31.3 件の事象).非検査群と検査群のあいだには,術中の事象(各群のそれぞれで,手術 1,000 件当り 19.2 件および 19.7 件)および術後の事象(手術 1,000 件当り 12.6 件および 12.1 件)に有意な差は認められなかった.年齢,性別,人種,身体状態(米国麻酔科医学会の分類による),および病歴による層別解析では,この一般的な検査には何の有益性も認められないことが明らかになった.
白内障手術の前に行われている一般的な医学検査によって,手術の安全性は測定できるほどは向上しない.