紙巻きたばこの喫煙と侵襲性の肺炎球菌疾患
Cigarette Smoking and Invasive Pneumococcal Disease
J.P. NUORTI AND OTHERS
侵襲性の肺炎球菌疾患に罹患していることを除くと健康であるという成人の約半数は,紙巻き煙草の喫煙者である.今回,われわれは,住民ベースの症例対照研究を実施し,肺炎球菌感染症の危険因子としての紙巻き煙草の喫煙とその他の因子の重要性について評価した.
侵襲性の肺炎球菌疾患(通常は無菌である部位からの Streptococcus pneumoniae [肺炎連鎖球菌] の分離よって定義した)に罹患し,年齢が 18~64 歳までの正常な免疫能を有する患者を,州都のアトランタ,ボルチモア,およびトロントの研究所で実施されていた能動的監視によって同定した.電話による聞き取り調査を,228 人の患者と,無作為電話番号法によって連絡した 301 人の対照者について行った.
これらの患者の 58%と対照者の 24%が,現在喫煙者であった.ロジスティック回帰分析によって,年齢,研究施設と,男性,黒人,慢性疾患,低レベルの教育水準,および託児所に預けている幼児との同居などの他の影響を受けない独立した危険因子で補正すると,侵襲性の肺炎球菌疾患には,紙巻き煙草の喫煙(オッズ比,4.1;95%信頼区間,2.4~7.3),および非喫煙者の受動喫煙(オッズ比,2.5; 95%信頼区間,1.2~5.1)との関連が認められた.1 日当りの紙巻き煙草の現在喫煙本数,喫煙の箱・年(1 日当りに喫煙した煙草の箱数に喫煙年数を乗じた値)には,用量反応関係が認められた.補正した人口属性危険度は,紙巻き煙草の喫煙が 51%,受動喫煙が17%,慢性疾患が 14%であった.
紙巻き煙草の喫煙は,正常な免疫能を有する非高齢成人において,侵襲性の肺炎球菌疾患のもっとも強力な独立した危険因子である.喫煙率が高く,しかもその人口属性危険度が大きいので,喫煙と環境中の煙草の煙への曝露を減らすことを目的としたプログラムには,肺炎球菌疾患の発症を減少させる可能性がある.