November 9, 2000 Vol. 343 No. 19
激しい運動が引き金となる心臓に起因する突然死
Triggering of Sudden Death from Cardiac Causes by Vigorous Exertion
C.M. ALBERT AND OTHERS
激しい運動が心停止や突然死の引き金になり得るということ,しかも,このリスクは習慣的な運動によって減少させられるかもしれないということが,後ろ向きの横断データから示唆されている.しかしながら,心臓に起因する突然死を引き起したり,あるいは防いだりすることにおける身体活動の役割については,多数の被験者を対象にした前向きの評価は行われていない.
医師の健康研究(the Physicians' Health Study)のなかで症例クロスオーバーデザインを用いて,激しい運動のエピソードのあいだおよび終了後 30 分間までの突然死のリスクを,もう少し軽い運動の実施中あるいは運動を行っていないときの突然死のリスクと比較した.次に,習慣的な激しい運動が,激しい運動との関連がある突然死のリスクを変化させるのかどうかについて評価した.さらに,習慣的な激しい運動と,冠動脈心疾患による突然死および非突然死の全リスクとの関係についても評価した.
研究開始時点において自己申告で心血管系疾患を有しておらず,その時点における習慣的な運動のレベルについての情報が入手できた 21,481 例の男性医師の追跡調査で,12 年間の調査期間中に 122 件の突然死が確認された.激しい運動の実施中および終了後 30 分間までの突然死の相対危険度は,16.9(95%信頼区間,10.5~27.0;p<0.001)であった.しかしながら,激しい運動のいかなるエピソード中であっても突然死の絶対危険度はきわめて低かった(運動のエピソード 151 万件につき 1 件の突然死).習慣的な激しい運動は,激しい運動のエピソードと関連していた突然死の相対危険度を低下させた(傾向性の p 値= 0.006).研究開始時点における運動レベルには,続発する突然死の全リスクとの関連は認められなかった.
米国の男性医師を対象としたこの研究から得られた前向きデータは,習慣的な激しい運動が,運動の実施中の突然死のリスクを減少させることを示唆するものである.