大サラセミアにおける鉄の肝臓内濃度と体内総貯蔵量
Hepatic Iron Concentration and Total Body Iron Stores in Thalassemia Major
E. ANGELUCCI AND OTHERS
大サラセミアが骨髄移植によって治癒し,過剰な鉄を除去するために瀉血治療を受けていた患者を対象として,体内の鉄総貯蔵量の評価において肝臓内の鉄濃度を測定することの有用性についての検討を行った.
肝硬変には至っていない 48 例の患者を対象として,移植から平均(±SD)で 4.3±2.7 年後に瀉血治療を開始した.肝生検で乾燥重量として 1.0 mg 以上のサンプルを入手できた 25 例の患者群では,肝臓内の鉄濃度の低下と体内の鉄総貯蔵量とのあいだに有意な相関性が認められた(r=0.98,p<0.001).瀉血で体内の貯蔵鉄が完全に除去されることによって肝臓内の鉄濃度が 0 にまで低下すると仮定すると,体内の鉄総貯蔵量(体重 1 kg 当りの mg として表示)は,肝臓内の鉄濃度(乾燥重量で肝臓 1 g 当りの mg として表示)の 10.6 倍と等しくなる.この等式を用いることで,体内の鉄総貯蔵量を高精度に推定することが可能であり,体重当り 250 mg/kg という高濃度の場合でも,推定値の標準誤差は 7.9 未満であった.
大サラセミアの患者では,肝臓内の鉄濃度は,体内の鉄総貯蔵量測定の信頼できる指標である.したがって,輸血による鉄過剰の患者においては,肝臓内の鉄濃度を繰り返し測定することが,長期の鉄平衡を測定するための定量的な手段となり得る.