August 31, 2000 Vol. 343 No. 9
産後早期のマラリアに対する感受性の上昇
Increased Susceptibility to Malaria during the Early Postpartum Period
N. DIAGNE AND OTHERS
マラリアに対する感受性の上昇は妊娠と関連している.また,一般的には,このリスクの上昇は分娩とともに下降するという意見の一致をみているものの,この感受性の上昇が産褥期にも続く可能性については検討されていない.
マラリアの伝播率の高いセネガルの一つの村の住民に対して,マラリアへの曝露,寄生虫血症,および疾病の状況についての監視を,1990 年 6 月 1 日~1998 年 12 月 31 日まで実施した.この村民集団において,38 例の女性の 71 件の妊娠について,妊娠の前年から分娩後 1 年目までの分析を行った.
これらの 38 例の女性では,61,081 人日の観察中に,Plasmodium falciparum(熱帯熱マラリア原虫)による臨床学的マラリアのエピソードが 58 件観察された.マラリアの発症率は,妊娠の前年には 1,000 人月当り 20.2 エピソード,分娩後 91~365 日目までの期間には 1,000 人月当り 12.0 エピソードであった.マラリアのエピソードの発生率は,妊娠中期と妊娠後期に有意に上昇して,分娩後 60 日目までの期間に最大となり,1,000 人月当り 75.1 エピソードにまで達した.産後 60 日目までの期間においてマラリアのエピソードが発生する補正相対リスクは,妊娠の前年と比較して 4.1(95%信頼区間,1.8~9.5)であった.妊娠中および産後早期の期間は,他の期間と比較して,マラリアのエピソード発現中における発熱の持続期間が長く,マラリアによる無症状性の寄生虫血症の有病率と寄生虫濃度も有意に高かった.
マラリアの伝播率が高い地域に居住している女性において,マラリアに対する感受性は,妊娠中期と妊娠後期,および産後早期にもっとも高い.