September 21, 2000 Vol. 343 No. 12
早期発症心筋梗塞患者の子孫における動脈の異常
Arterial Abnormalities in the Offspring of Patients with Premature Myocardial Infarction
G. GAETA AND OTHERS
冠動脈疾患を早期に発症した患者の子孫は,アテローム性動脈硬化症のリスクが高い可能性がある.そこで,われわれは,親に早期発症心筋梗塞の病歴がある青年および若年成人において,初期のアテローム性動脈硬化症の二つの指標である上腕動脈の反応性と,頸動脈内膜中膜複合体厚に変化が生じているかどうかを調べることを目的として研究を実施した.
研究には,心筋梗塞を早期に発症した親をもつ若い健常者 40 例(男性 48%;平均 [±SD] 年齢,19.0±5.2 歳)と,これらの対象者群と年齢および性別をマッチさせた対照者 40 例を組み入れた.すべての対象者に対して,高分解能 B モード超音波検査を実施し,上腕動脈の動脈閉塞後の血管拡張反応(すなわち,反応性充血)と,遠位総頸動脈の内膜中膜複合体厚を測定した.
対照者と比較すると,心筋梗塞を早期に発症した親をもつ子孫では,上腕動脈には低血流による反応性がみられ(5.7±5.0%,これに対して対照者では 10.2±6.6%;p = 0.001),総頸動脈の内膜中膜複合体厚の平均も大きかった(0.49±0.08 mm,これに対して対照者では 0.44±0.07 mm;p = 0.004).親に早期発症心筋梗塞の病歴がある対象者では,上腕動脈の反応性と頸動脈内膜中膜複合体厚に逆相関が認められた(r= -0.46,p = 0.003).条件付きロジステック回帰分析では,上腕動脈の反応性と頸動脈内膜中膜複合体厚のいずれにも,親の早期発症心筋梗塞の病歴との有意かつ独立の関連が認められた.
親に早期発症心筋梗塞の病歴がある人々は,若年時点ですでに動脈の構造的および機能的な変化が生じている.