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March 1, 2001 Vol. 344 No. 9

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人工股関節全置換術後の深部静脈血栓症に対する予防のための合成五糖類
A Synthetic Pentasaccharide for the Prevention of Deep-Vein Thrombosis after Total Hip Replacement

A.G.G. TURPIE, A.S. GALLUS, AND J.A. HOEK

背景

静脈血栓塞栓症は人工股関節全置換術後にしばしばみられる合併症である.五糖類の Org31540/SR90107A は,選択性の高い活性化凝固第 X 因子の間接的阻害剤の一つで,合成抗血栓薬の新規クラスに分類される最初の薬剤である.第三相試験で用いる至適用量を決定するために,人工股関節全置換術を受ける患者を対象として,Org31540/SR90107A を低分子ヘパリンのエノキサパリン(Enoxaparin)と比較する用量設定試験を実施した.

方 法

今回の二重盲検試験では,全置換術後に,Org31540/SR90107A の 1 日用量として検討したい 5 用量のうちのいずれかを 1 日 1 回投与,またはエノキサパリン 30 mg を 12 時間ごとに投与する治療に,患者を無作為に割付けた.これらの治療は,10 日間または術後少なくとも 5 日目以降に両側の静脈造影法を実施するまで継続した.

結 果

治療を受けた 933 例の患者のうち,593 例が有効性解析の適格例であった.Org31540/SR90107A には用量効果が観察された(p = 0.002).すなわち,静脈血栓塞栓症の発症率は,Org31540/SR90107A の 0.75 mg,1.5 mg,3.0 mg,6.0 mg,および 8.0 mg に割付けられた患者群で,それぞれ 11.8%,6.7%,1.7%,4.4%,および 0%であった.これに対して,エノキサパリン群では 9.4%であった.したがって,静脈血栓塞栓症のリスクは,Org31540/SR90107A の 3.0 mg 群では 82%低下し(p = 0.01),1.5 mg 群では 29%低下していた(p = 0.51).Org31540/SR90107A の 6.0 mg 群と 8.0 mg 群への患者の組み入れは,出血の合併症が発現したために中止した.大出血の発現率は,エノキサパリン群よりも,0.75 mg 群では 3.5%少なく(p = 0.01),1.5 mg 群では 3.0%少なかった(p = 0.05)(エノキサパリン群の発現率は Org31540/SR90107A の 3.0 mg 群と同程度であった).

結 論

合成五糖類の Org31540/SR90107A には,低分子ヘパリンと比較して,静脈血栓塞栓症の予防におけるリスク-効果比を有意に改善させる可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 619 - 25. )