April 18, 2002 Vol. 346 No. 16
生体外遺伝子治療による X 染色体連鎖重症複合免疫不全症の継続的な回復
Sustained Correction of X-Linked Severe Combined Immunodeficiency by ex Vivo Gene Therapy
S. HACEIN-BEY-ABINA AND OTHERS
共通γ(γc)鎖をコードする遺伝子の突然変異により生じる X 染色体連鎖重症複合免疫不全症は,致死的な疾患であるが同種幹細胞移植により治療できる可能性がある.われわれは,体外でγc 遺伝子を導入した自家造血幹細胞の輸注が,重症複合免疫不全症患者の免疫系を再構築させるかどうかを検討した.
X 連鎖重症複合免疫不全症の男児 5 例の CD34+骨髄細胞に,欠損レトロウイルスベクターを用いて生体外で導入を行った.γc 導入遺伝子の挿入と発現,およびリンパ球サブグループの発生とその機能を,遺伝子導入後最長 2.5 年間連続して解析した.
処置による有害作用は認められなかった.導入された T 細胞とナチュラルキラー細胞は,4 ヵ月以内に 5 例中 4 例の血液中に出現した.T 細胞の数と表現型,T 細胞受容体のレパトア,および免疫感作後の複数の抗原に対する T 細胞の in vitro 増殖反応は,治療 2 年後までほぼ正常であった.T 細胞が胸腺内で発生していることは,感作されていない T 細胞と T 細胞抗原受容体エピソームの存在,および正常な大きさの胸腺の発達により確認した.導入された B 細胞は少なかったが,血清免疫グロブリン濃度と免疫感作後の抗体産生は十分であり,免疫グロブリンを静脈内投与する必要はなかった.免疫不全の回復により,それまでに成立していた感染が根絶され,患者は普通の生活を送ることができた.
γc 遺伝子を用いた生体外遺伝子治療は,X 連鎖重症複合免疫不全症患者の免疫不全を安全に回復させることができる.