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January 30, 2003 Vol. 348 No. 5

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天然痘ワクチン接種方針のモデル
A Model for a Smallpox-Vaccination Policy

S.A. Bozzette and Others

背景

生物兵器によるテロおよび戦争が最近現実性をもち,天然痘ワクチン接種を再び導入するかどうかに関する論争を引き起している.

方 法

天然痘による攻撃のシナリオを作り,さまざまな管理方針に基づいて結果の確率モデルを作成した.系統的な文献調査を行い,第 2 次世界大戦以降の欧州および北米の集団発生に基づくモデルパラメータを推定した.ワクチン接種に関連した害と利益のバランスを評価した.

結 果

天然痘兵器を所有する国家やテロリストは,戦略の複雑さや標的の大きさが異なる攻撃を行う可能性があり,天然痘蔓延のパターンは,はじめに感染した患者が早期に入院するかどうかにより異なると予測される.満足のいく結果を得るためには,感染の可能性がある者へのワクチン接種と共に,効果的な隔離を行わなければならない.感染の可能性がある者へのワクチン接種および隔離は,実験室から天然痘ウイルスが放出したとするシナリオでは死者 7 名(ワクチン接種または天然痘による死亡),ヒトが媒介するとしたシナリオでは死者 19 名,建物への攻撃のシナリオでは死者 300 名,影響の少ない空港への攻撃が関与するシナリオでは死者 2,735 名,影響の大きい空港への攻撃が関与するシナリオでは死者 54,729 名を出す結果になると予測される.攻撃を受けた地域の住民に対してワクチン接種を迅速に行っても,付加的な利益はほとんどないであろう.大きな影響を受ける医療関係者に対する事前のワクチン接種は,大規模な特定地域または全米規模の攻撃においては救命に役立つと考えられるが,全米で 25 例の死者を出すと考えられる.医療関係者および国民への事前のワクチン接種は,全米規模の攻撃においては救命に役立つと考えられるが,全米で 482 例の死者を出すと考えられる.ワクチン接種の予測される純利益は,攻撃が起る予想確率に左右される.医療関係者への事前のワクチン接種は,建物への攻撃が起る確率が 0.22 以上であるか,影響の大きい空港への攻撃が起る確率が 0.002 以上であれば救命効果があると考えられる.国民へのワクチン接種により救命効果を得るためには,確率がはるかに高くなければならないであろう.

結 論

この解析は,なんらかの攻撃が起る確率が非常に低くない限り,事前に医療関係者にワクチン接種を行うことを支持する.しかし,国民へのワクチン接種は,全米規模の攻撃または多発攻撃が起る確率が高い場合にのみ支持される.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2003; 348 : 416 - 25. )