DNA マイクロアレイプロファイリングで同定した同種移植腎の急性拒絶反応における分子多様性
Molecular Heterogeneity in Acute Renal Allograft Rejection Identified by DNA Microarray Profiling
M. Sarwal and Others
急性拒絶反応の原因と臨床経過は多様であり,既存の臨床,病理,遺伝子マーカーに基づいて移植片の転帰を確実に予測することは不可能である.われわれは,これまで認識されていなかった分子多様性が,同種移植腎の急性拒絶反応にみられる臨床経過と治療に対する反応において,部分的にその変動性の基礎をなしているかもしれないという仮説を立てた.
DNA マイクロアレイを用いて,正常移植腎および機能不全に陥った移植腎から得た生検標本の遺伝子発現パターンについて系統的な研究を行った.探索的および検証的なバイオインフォマティクスの手法を組み合せて用い,これらのプロファイルを解析した.
急性拒絶反応,薬剤の腎毒性の影響,慢性移植腎症および正常な腎臓と関連する遺伝子発現パターンのあいだに,一貫した違いが認められた.急性拒絶反応と関連する遺伝子発現パターンから,可能性のある急性拒絶反応の亜型として,少なくとも 3 つの異なる亜型が示唆された.これらは光学顕微鏡では識別不能であるが,免疫の活性化と細胞増殖の違いで特徴付けられる.遺伝子発現パターンより浸潤免疫細胞の構成の顕著な多様性が示されたため,これらの亜型をさらに定義するために免疫組織化学染色を行った.この解析から,CD20+ B細胞の高密度な浸潤と,臨床的なグルココルチコイド抵抗性(P=0.01)および移植腎廃絶(P<0.001)の両方とのあいだに,強い関連があることが明らかとなった.
遺伝子発現パターンの系統的解析は,移植腎拒絶反応の生物学と病因を知る機会を与える.従来の組織学的解析では区別できない急性拒絶を起した患者の生検標本から,遺伝子発現に幅広い違いがあることが明らかになったが,この違いは,免疫学的特徴,細胞学的特徴,臨床経過の違いと関連している.生検標本でみられた高密度な B 細胞集団は,重度な移植腎拒絶反応と強く関連しており,急性拒絶反応において浸潤 B 細胞が中心的役割を果していることを示唆している.