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October 23, 2003 Vol. 349 No. 17

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思春期の調節因子としての GPR54 遺伝子
The GPR54 Gene as a Regulator of Puberty

S.B. Seminara and Others

背景

思春期は,性的発達,身長の発育の加速,副腎の成熟を含む複雑な生物学的過程であり,視床下部からゴナドトロピン放出ホルモンが分泌され始めたときに始る.われわれは,思春期の開始を決定する遺伝的因子を同定するために,ヒトとマウスで研究を行った.

方 法

ヒトとマウスにおいて遺伝子学的方法により相補的な検討を行った.思春期発達のない(特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)者のいる血縁家族について,G 蛋白共役型受容体をコードする候補遺伝子 GPR54 の変異を調べた.GPR54 の野生型と変異型について,in vitro で機能の相違を検討した.同時に,Gpr54 欠損マウスモデルを作成し,表現型を解析した.ヒトとマウス両方で,外因性のゴナドトロピン放出ホルモンに対する反応性を評価した.

結 果

指標となる家系の罹患患者は,GPR54 遺伝子の L148S 変異がホモ接合性であった.また,特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有する,血縁関係のない発端者は,2 つの異なる変異,R331X と X399R を有することが明らかになった.COS-7 細胞に in vitro で変異体を形質移入すると,イノシトールリン酸の蓄積に有意な低下が認められた.複合的ヘテロ接合性の変異(R331X,X399R)を有する患者では,GPR54 変異のない特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症患者 6 例と比較して,内因性のゴナドトロピン放出ホルモンの分泌が低下しており,ゴナドトロピン放出ホルモンに対する用量反応曲線が左へシフトしていた.Gpr54 欠損マウスは単独の低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(雄マウスで精巣が小さく,雌マウスでは腟口の開口が遅れ,卵胞成熟がない)を有していたが,外因性のゴナドトロピンとゴナドトロピン放出ホルモン両方に対して反応性を示し,視床下部のゴナドトロピン放出ホルモン濃度は正常であった.

結 論

G 蛋白共役型受容体遺伝子 GPR54 の変異により,ヒトとマウスで常染色体劣性の特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症が起る.このことから,この受容体がゴナドトロピン放出ホルモンの正常な生理機能と思春期とに必須であることが示唆される.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2003; 349 : 1614 - 27. )