November 6, 2003 Vol. 349 No. 19
散発性クロイツフェルト–ヤコブ病における神経外異常プリオン蛋白
Extraneural Pathologic Prion Protein in Sporadic Creutzfeldt–Jakob Disease
M. Glatzel, E. Abela, M. Maissen, and A. Aguzzi
散発性クロイツフェルト–ヤコブ病患者において,疾患関連の異常プリオン蛋白(PrPSc)は中枢神経系および嗅神経組織においてのみ同定されていた.クロイツフェルト–ヤコブ病における PrPSc の分布を理解することは,疾患の分類や診断に重要であり,予防にも重要である可能性がある.
高感度の検出法――リンタングステン酸ナトリウムを用いた分別沈殿で PrPSc を濃縮することにより,ウェスタンブロット法の感度を最大 103 倍に上昇させる方法――を用い,1996~2000 年に死亡した散発性クロイツフェルト–ヤコブ病患者 36 例の神経系以外の臓器で PrPSc を探索した.
PrPSc は全患者の脳組織に存在していた.さらに,脾臓検体 28 例中 10 例と骨格筋検体 32 例中 8 例で PrPSc が検出された.3 例では脾臓検体と筋検体の両方に PrPSc が検出された.神経系以外に PrPSc が存在しない患者よりも,神経系以外に PrPSc が存在する患者のほうが罹病期間が有意に長く,散発性クロイツフェルト–ヤコブ病の異常な分子変異体を有する率が高かった.
高感度な方法を使用することで,散発性クロイツフェルト–ヤコブ病で死亡した患者の約 1/3 において,PrPSc の神経系以外への沈着が脾臓検体と筋肉検体に確認された.神経系以外の PrPSc は,より長期の罹病期間と関連すると考えられる.