December 11, 2003 Vol. 349 No. 24
慢性移植腎症の自然経過
The Natural History of Chronic Allograft Nephropathy
B.J. Nankivell and Others
免疫抑制や同種移植片の早期生着率の改善に伴い,慢性移植腎症が腎移植片不全の最大の原因となった.
1 型糖尿病のレシピエント計 120 例を対象にした前向き研究において,慢性移植腎症の自然経過を評価した.レシピエントは 1 例を除き,全員が膵腎移植を受けていた.移植後 10 年にわたって定期的に移植腎の生検を行い,961 標本を採取した.
慢性移植腎症の進行に伴い,明瞭に区別できる損傷の段階が 2 つ明らかになった.虚血性障害による初期の尿細管間質損傷(P<0.05),重度拒絶反応歴(P<0.01),無症状の拒絶反応(P<0.01)といった初期段階は,1 年以内の軽度疾患を予測し,実際に患者の 94.2%が発症した.初期の無症状の拒絶反応は頻度が高く(3 ヵ月後の生検標本の 45.7%に及ぶ),そのリスクは重度拒絶反応歴があると増大し(P<0.05),タクロリムスやミコフェノール酸による治療で減少し(P<0.05),1 年後には徐々に減少した.無症状の拒絶反応と慢性拒絶反応は,尿細管間質損傷の増加に関連していた(P<0.01).1 年目以後の,慢性移植腎症の後期には,微小血管や糸球体の損傷が特徴的であった.慢性拒絶反応(2 年以上持続する無症状の拒絶反応と定義)の頻度は低かった(5.8%).管腔狭窄を伴う進行性の高度細動脈性ヒアリン症,糸球体硬化症の進行および尿細管間質損傷の増加が,カルシニューリン阻害薬の使用に伴って生じた.後期の進行する損傷に関連した腎毒性は 10 年目でもほぼ全例で認められ,初期の組織学的所見が良好な移植片においてさえ確認された.10 年間で,重症の慢性移植腎症は患者の 58.4%に発現し,糸球体の 37.3%が硬化を起していた.尿細管間質と糸球体の損傷は一度起ると不可逆的で,腎機能の低下と移植片廃絶をもたらした.
慢性移植腎症は,時間依存的な免疫学的・非免疫学的な原因がもたらす,ネフロンへの損傷の蓄積と付加を示している.