甲状腺機能低下症の女性において妊娠中にレボチロキシンの必要量が増加する時期とその程度
Timing and Magnitude of Increases in Levothyroxine Requirements during Pregnancy in Women with Hypothyroidism
E.K. Alexander and Others
妊娠中の甲状腺機能低下症は,認知発達障害や胎児死亡率の増加と関連している.妊娠中は,母体の甲状腺ホルモン必要量が増加する.甲状腺機能低下症の女性では,妊娠中にレボチロキシンの用量をふやすべきであることが知られているが,多くの例で,生化学的にみて甲状腺機能低下が生じている.この前向き研究で,妊娠中に必要とされるレボチロキシンの調整の時期と量を正確に決定することを試みた.
妊娠を計画していた甲状腺機能低下症の女性を対象に,妊娠前から妊娠期間を通して前向きに観察を行った.甲状腺機能,ヒト絨毛性ゴナドトロピン,エストラジオールを,妊娠前,妊娠第 1 三半期には約 2 週間に 1 回,その後 1 ヵ月に 1 回測定した.レボチロキシンの用量は,妊娠期間を通して甲状腺刺激ホルモン濃度が妊娠前の値に保たれるよう増量した.
19 人の女性で 20 例の妊娠があり,うち正期産は 17 例であった.レボチロキシンの増量は妊娠 17 例で必要であった.レボチロキシンの平均必要量は,妊娠前半に 47%増加し(増量開始の中央値,妊娠第 8 週),第 16 週を過ぎるころには横ばいになった.この増加後の用量は出産まで必要であった.
レボチロキシンの必要量は,早ければ妊娠第 5 週に増加する.胎児の正常な認知発達のためには母親の甲状腺機能が正常であることが重要であることを考えると,甲状腺機能低下症の女性には,妊娠が確認され次第,ただちにレボチロキシンの用量を約 30%増量することを提案する.その後,血清甲状腺刺激ホルモン値を監視し,それに応じてレボチロキシンの用量を調整する必要がある.