The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

March 17, 2005 Vol. 352 No. 11

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

臓器ドナーから移植レシピエント 4 例への狂犬病ウイルスの感染
Transmission of Rabies Virus from an Organ Donor to Four Transplant Recipients

A. Srinivasan and Others

背景

2004 年,腎臓,肝臓,動脈の移植を共通の臓器ドナーから受けたレシピエント 4 例が,原因不明の脳炎で死亡した.

方 法

これらの臓器ドナーとレシピエントの診療録を再検討した.脳炎を引き起す多様な原因を明らかにするため,レシピエントの血液,脳脊髄液,組織を,さまざまなアッセイと病理学的染色法で検査した.レシピエントから採取した検体はマウスへも接種した.

結 果

臓器ドナーは,死亡の原因となったくも膜下出血を起すまでは健康であった.脳炎はレシピエント 4 例全例で移植後 30 日以内に発生し,激越性せん妄,痙攣,呼吸不全,昏睡を特徴とする急速な神経症状の増悪を伴っていた.レシピエントは神経症状の発現後,平均 13 日で死亡した.罹患患者の検体を接種されたマウスは,7~8 日後に発症し,中枢神経系組織の電子顕微鏡観察でラブドウイルス粒子が確認された.狂犬病ウイルスに特異的な免疫組織化学的直接蛍光抗体染色法により,全レシピエントの複数の組織で狂犬病ウイルスが確認された.ネグリ小体と一致した細胞質内封入体が,全レシピエントの中枢神経系組織で認められた.レシピエント 4 例中 3 例およびドナーで,抗狂犬病ウイルス抗体が認められた.ドナーは,コウモリに咬まれたと人に話していた.

結 論

臓器ドナーから複数のレシピエントへの狂犬病ウイルスの感染を記録したこの報告は,移植を介して起るまれな病原体の感染の,予防と検出に取り組む必要性を強調している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2005; 352 : 1103 - 11. )