January 13, 2005 Vol. 352 No. 2
脳動静脈奇形に対する放射線手術後の出血のリスク
The Risk of Hemorrhage after Radiosurgery for Cerebral Arteriovenous Malformations
K. Maruyama and Others
大部分の脳動静脈奇形は,定位放射線手術により数年間の潜伏期を経て閉塞することが,血管造影で示されている.しかし,この治療が出血リスクに及ぼす効果は十分に解明されていない.
ガンマナイフによる放射線手術を受けた脳動静脈奇形をもつ患者 500 例を対象に,後ろ向き観察研究を実施した.放射線手術前,放射線手術から奇形の閉塞が血管造影で立証されるまで(潜伏期),血管造影上の閉塞後の 3 つの期間で,出血の発生率を評価した.
出血は,放射線手術前(追跡調査期間の中央値 0.4 年)に 42 例,潜伏期(追跡調査期間の中央値 2.0 年)に 23 例,閉塞後(追跡調査期間の中央値 5.4 年)に 6 例で記録された.出血のリスクは,診断から放射線手術までの期間と比較して,潜伏期に 54%(ハザード比 0.46,95%信頼区間 0.26~0.80,P=0.006),閉塞後に 88%(ハザード比 0.12,95%信頼区間 0.05~0.29,P<0.001)低下した.出血のリスクは,潜伏期と比べて閉塞後の期間に有意に低下した(ハザード比 0.26,95%信頼区間 0.10~0.68,P=0.006).低下の程度は,受診時に出血がなかった患者よりも出血のみられた患者でより大きく,血管造影による閉塞の確認の遅延を考慮した解析や,診断後 1 年間に得られたデータを除外した解析でも同様であった.
放射線手術は,脳動静脈奇形の患者において,血管造影で閉塞の徴候が認められる以前であっても,出血のリスクを有意に低下させる効果をもつ.閉塞後,出血リスクはさらに低下するが,消失はしない.