November 3, 2005 Vol. 353 No. 18
心臓負荷検査を指示された患者の呼吸困難が予後予測にもつ重要性
Prognostic Significance of Dyspnea in Patients Referred for Cardiac Stress Testing
A. Abidov and Others
呼吸困難はよくみられる症状であるが,心機能評価を受けるよう指示された患者の呼吸困難が予後予測にもつ重要性に関してはほとんど研究されていない.
負荷時と安静時に心筋血流単光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)を受けた患者 17,991 例を検討した.受診時の症状に基づいて患者を 5 つに分類した(症状なし,狭心症によらない胸痛,非定型狭心症,定型狭心症,呼吸困難).多変量解析を用いて,心臓が原因の死亡リスクと全死因死亡リスクを予測するうえで,症状分類によって付加される予後予測能を評価した.さらに,傾向分析に基づいて選択したサブグループにおいて,受診時のさまざまな症状に関連する予後を比較した.
平均(±SD)2.7±1.7 年の追跡後,心臓が原因の死亡と全死因死亡の発生率は,呼吸困難のある患者(冠動脈疾患の既往のある患者,ない患者両方)では,受診時に症状のなかった患者やほかの症状を呈していた患者と比較して有意に高かった.冠動脈疾患の既往がない患者のうち,呼吸困難を呈していた患者では,心臓が原因の突然死のリスクは,無症状の患者の 4 倍,定型狭心症患者の 2 倍以上であった.呼吸困難は,臨床的に関連のある各サブグループで死亡リスクの有意な上昇に関連しており,多変量解析と傾向分析では,呼吸困難以外の重要な要因で補正後,心臓が原因の死亡リスク(P<0.001)と全死因死亡リスク(P<0.001)の独立した予測因子であった.
大規模な一連の患者において,患者が報告した呼吸困難から,呼吸困難以外に症状のない,心臓が原因の死亡と全死因死亡のリスクが高い患者のサブグループを同定することができた.この結果から,心臓負荷検査を指示された患者の臨床評価に,呼吸困難の評価を組み入れるのが望ましいことが示唆される.