November 10, 2005 Vol. 353 No. 19
EGFR キナーゼ阻害薬に対する膠芽腫の反応における分子的決定因子
Molecular Determinants of the Response of Glioblastomas to EGFR Kinase Inhibitors
I.K. Mellinghoff and Others
上皮成長因子受容体(EGFR)は,膠芽腫において頻繁に増幅,過剰発現,変異しているが,EGFR キナーゼ阻害薬に反応するのは患者のわずか 10~20%である.これらの阻害薬に対する膠芽腫の反応のメカニズムについては知られていない.
EGFR キナーゼ阻害薬の投与を受けた患者から再発悪性神経膠腫を採取し,EGFR 遺伝子とヒト EGFR 2 型(Her2/neu)遺伝子のキナーゼドメインの塩基配列を決定した.また,EGFR,EGFR 欠損変異体 III(EGFRvIII),腫瘍抑制蛋白 PTEN の発現を解析した.臨床反応の分子的相関因子を決定し,それを独立したデータセットで検証して,in vitro で分子異常の影響を特定した.
EGFR キナーゼ阻害薬で治療を受けた再発悪性神経膠腫患者 49 例のうち,9 例で腫瘍が 25%以上縮小した.分子解析用の治療前の組織は,26 例から得られた.うち 7 例は治療に反応し,19 例は疾患が急速に進行した.腫瘍から EGFR キナーゼドメインや Her2/neu キナーゼドメインの変異体は検出されなかった.EGFRvIII と PTEN の共発現は,臨床反応と有意に関連していた(P<0.001,オッズ比 51,95%信頼区間 4~669).これらの知見は,他の施設で膠芽腫に対して同様の治療を受けた患者 33 例で妥当性が確認された(P=0.001,オッズ比 40,95%信頼区間 3~468).in vitro では,EGFRvIII と PTEN の共発現により,膠芽腫細胞のエルロチニブに対する感受性が高まった.
膠芽腫細胞における EGFRvIII と PTEN の共発現は,EGFR キナーゼ阻害薬に対する反応と関連している.