April 20, 2006 Vol. 354 No. 16
アンジオテンシン受容体拮抗薬による高血圧前症治療の実施可能性
Feasibility of Treating Prehypertension with an Angiotensin-Receptor Blocker
S. Julius and Others
高血圧前症は,ステージ 1 高血圧の前駆症状であり,心血管の過大なリスクの予測因子であると考えられている.高血圧前症の薬理学的治療により,ステージ 1 高血圧が予防ないし遅延されるかどうかを検討した.
血圧の反復測定で,収縮期血圧 130~139 mmHg かつ拡張期血圧 89 mmHg 以下,または収縮期血圧 139 mmHg 以下かつ拡張期血圧 85~89 mmHg であった試験参加者を,カンデサルタン(商品名 Atacand,AstraZeneca 社)またはプラセボを 2 年間投与する群に無作為に割付け,その後全例にプラセボを 2 年間投与した.試験参加者が,試験のエンドポイントであるステージ 1 高血圧に達した時点で,降圧薬による治療を開始した.カンデサルタン群とプラセボ群の両方に対して,血圧を下げるために生活習慣を変えるよう,試験期間を通して指導を行った.
試験参加者のうち,計 409 例をカンデサルタン群,計 400 例をプラセボ群に無作為に割付けた.解析には,772 例(カンデサルタン群 391 例,プラセボ群 381 例;平均年齢 48.5 歳;男性 59.6%)のデータが利用可能であった.最初の 2 年間に,プラセボ群の 154 例とカンデサルタン群の 53 例が高血圧を発症した(相対リスク低下 66.3%,P<0.001).4 年後には,高血圧を発症したのは,プラセボ群で 240 例,カンデサルタン群で 208 例であった(相対リスク低下 15.6%,P<0.007).重篤な有害事象は,カンデサルタン群の 3.5%と,プラセボ群の 5.9%で発生した.
4 年間で,高血圧前症の治療を受けなかった患者(プラセボ群)の約 2/3 がステージ 1 高血圧を発症した.カンデサルタンによる高血圧前症の治療は,忍容性が高いとみられ,試験期間中の高血圧発症リスクを低下させた.したがって,高血圧前症の治療は実施可能であると考えられる.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00227318)
本論文は,2006 年 3 月 14 日 www.nejm.org で発表された.