急性肺損傷の治療指針としての肺動脈カテーテルと中心静脈カテーテルの比較
Pulmonary-Artery versus Central Venous Catheter to Guide Treatment of Acute Lung Injury
The National Heart, Lung, and Blood Institute ARDS Clinical Trials Network
肺動脈カテーテル(PAC)の有用性とリスクのバランスは,いまのところ確立されていない.
急性肺損傷と確定診断された患者 1,000 例を対象に,明確な管理プロトコールを用い,PAC ガイド化の血行力学的管理と中心静脈カテーテル(CVC)ガイド化の血行力学的管理を比較した無作為化試験において,PAC の有用性とリスクの関連性を評価した.試験では,主要転帰は,無作為化後最初の 60 日間における退院前の死亡率とした.
各群のベースライン特性は同等であった.最初の 60 日間における退院前の死亡率は,PAC 群と CVC 群で同等であり(それぞれ 27.4%,26.3%;P=0.69;絶対差 1.1%;95%信頼区間 -4.4~6.6%),28 日目までに人工呼吸器を使用しなかった日数(13.2±0.5 日,13.5±0.5 日;P=0.58)および集中治療室に滞在しなかった日数(12.0±0.4 日,12.5±0.5 日;P=0.40)も同等であった.試験登録時にショック状態であった患者では,PAC ガイド化の治療によりこれらの項目は改善しなかった.肺機能,腎機能,低血圧の割合,人工呼吸器の有無,透析または昇圧薬の使用について,群間に有意差は認められなかった.両群とも,プロトコールの指示に約 90%従い,CVC ガイド化の治療から PAC ガイド化の治療へのクロスオーバー率は 1%であった.体液バランスは両群で同等であり,補液および利尿薬について指示が出された割合も同等であった.ドブタミンの使用はまれであった.PAC 群では,カテーテル関連合併症(おもに不整脈)の発生数が 2 倍であった.
PAC ガイド化の治療は,CVC ガイド化の治療と比較して,生存および臓器機能を改善することなく,合併症がより多く発生した.これまでの研究と併せて考えると,これらの結果から,PAC は急性肺損傷の管理にルーチンで使用すべきでないことが示唆される.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00281268)
本論文は,2006 年 5 月 21 日 www.nejm.org で発表された.