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January 19, 2006 Vol. 354 No. 3

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嚢胞性線維症における高張食塩水使用時の粘液クリアランスと肺機能
Mucus Clearance and Lung Function in Cystic Fibrosis with Hypertonic Saline

S.H. Donaldson and Others

背景

嚢胞性線維症患者では,気道表面の粘液量の恒常性に異常がみられるが,これが粘液クリアランスと気道防御機能の低下を引き起すと考えられている.高張食塩水を使用すると,浸透圧によって気道表面の粘液量が増加し,粘液クリアランスが回復して,肺機能が改善される可能性がある.

方 法

計 24 例の嚢胞性線維症患者を,アミロライドの前投与の併用,非併用での 1 日 4 回の高張食塩水(7%塩化ナトリウム溶液 5 mL)吸入に無作為に割付けた.粘液クリアランスと肺機能を,14 日間のベースライン期間中と投与期間中に測定した.

結 果

長期間の高張食塩水吸入では,アミロライドの前投与を併用しない群(すなわちプラセボ前投与併用群)で,アミロライド前投与併用群と比較して 1 時間当りの粘液クリアランス率の上昇が持続し(≧8 時間)(14.0±2.0% 対 7.0±1.5%,P=0.02),ベースラインよりも 24 時間粘液クリアランス率が上昇した.さらに,プラセボ併用高張食塩水吸入群では,ベースライン期間と投与期間のあいだで 1 秒量(FEV1)が改善したが(平均差 6.62%,95%信頼区間 1.6~11.7,P=0.02),アミロライド併用高張食塩水吸入群では FEV1 は改善しなかった(平均差 2.9%,95%信頼区間 -2.2~8.0,P=0.23).努力肺活量(FVC),最大呼気中間流量(FEF25-75),呼吸器症状も,プラセボ併用高張食塩水吸入群の患者で有意に改善したが,残気量の全肺気量に対する比(RV:TLC)については,いずれの群でも変化は認められなかった.両群の肺機能の変化の比較では,有意差は認められなかった.in vitro のデータから,粘液クリアランスの持続的な改善には,気道表面への持続的な水分補給が寄与していることが示唆されたが,一方,浸透圧による水分移動のアミロライドによる抑制が,観察された臨床効果の低下の主な原因であることが示された.

結 論

嚢胞性線維症患者では,高張食塩水吸入により,粘液クリアランスの上昇が持続し,肺機能が改善した.この治療法により,粘液クリアランスの低下と肺疾患を引き起す障害から,肺を保護できる可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 354 : 241 - 50. )