転写プロファイリングとゲノムプロファイリングによるバーキットリンパ腫の生物学的定義
A Biologic Definition of Burkitt's Lymphoma from Transcriptional and Genomic Profiling
M. Hummel and Others
バーキットリンパ腫とびまん性大細胞型 B リンパ腫の区別は明確ではない.バーキットリンパ腫をより正確に定義し,他のタイプの成熟進行性 B 細胞性リンパ腫のサブグループと識別するために,転写プロファイリングとゲノムプロファイリングを行った.
WHO 基準をすべて満たすバーキットリンパ腫 8 例のコアグループを含む,成熟進行性 B 細胞性リンパ腫 220 例の RNA を用いて,Affymetrix U133A GeneChip により遺伝子発現プロファイルを決定した.バーキットリンパ腫の分子特性を作成し,インターフェース蛍光 in situ ハイブリダイゼーションと,マイクロアレイを用いた比較ゲノムハイブリダイゼーションにより,染色体異常を検出した.
バーキットリンパ腫の分子特性から,44 例を同定した.このうち 11 例はびまん性大細胞型 B リンパ腫の形態学的特徴を有し,4 例は分類不可能な成熟進行性 B 細胞性リンパ腫,29 例は定型・非定型バーキットリンパ腫の形態学的特徴を有していた.また 5 例には IG-myc バーキットリンパ腫でみられる転座が検出されなかったが,他の症例では IG-myc 融合がみられ,その大半が単一染色体の核型に存在した.バーキットリンパ腫の分子特性をもたないリンパ腫 176 例のうち,155 例がびまん性大細胞型 B リンパ腫であった.この 155 例のうち,21%では複雑な染色体の変化に伴い myc 座の染色体に切断点があり,臨床経過は不良であった.
われわれの用いたバーキットリンパ腫の分子的な定義は,バーキットリンパ腫の WHO 分類基準の範囲を明確にし,拡大する.バーキットリンパ腫の遺伝子特性をもたない成熟進行性 B 細胞性リンパ腫では,myc 座に染色体切断点があることは臨床転帰不良に関連していた.