February 2, 2006 Vol. 354 No. 5
内科 ICU における強化インスリン療法
Intensive Insulin Therapy in the Medical ICU
G. Van den Berghe and Others
強化インスリン療法は,外科集中治療室(ICU)の患者の障害の発生率と死亡率を低下させるが,内科 ICU の患者におけるその役割は明らかにされていない.
前向き無作為化対照試験において,本院の内科 ICU に入室した成人患者のうち,3 日以上の集中治療が必要と考えられる患者について検討した.入室時に患者を,インスリン注入で血糖値を厳密に正常化する群(80~110 mg/dL [4.4~6.1 mmol/L] にする),または従来療法群(血糖値が 215 mg/dL [12 mmol/L] を超えた場合にインスリンを投与し,血糖値が 180 mg/dL [10 mmol/L] 未満に低下した場合は注入量を漸減する)に無作為に割付けた.患者の 16.9%に糖尿病の既往があった.
1,200 例を対象とした intention-to-treat 解析において,強化インスリン療法により血糖値は低下したが,院内死亡率の低下については有意ではなかった(従来療法群 40.0% 対 強化療法群 37.3%,P=0.33).しかし障害の発生率は,新たな腎障害が予防されたこと,人工換気からの離脱が促進されたこと,ICU からの退室や退院が早まったことによって,有意に低下した.ICU の在室期間は入院時に予測できなかったが,ICU 在室日数が 3 日未満の患者 433 例では,強化インスリン療法を受けた患者で死亡率がより高かった.これに対し,ICU 在室日数が 3 日以上の患者 767 例では,強化インスリン療法を受けた 386 例の院内死亡率は 52.5%から 43.0%に低下し(P=0.009),障害の発生率も低下した.
内科 ICU の患者全体では,強化インスリン療法により障害の発生率は有意に低下したが,死亡率は低下しなかった.3 日以上治療を受けた患者では,治療後の死亡や疾患のリスクが減少したが,そのような患者を治療前に識別することはできなかった.これらの予備的データを確認するため,さらに試験を行う必要がある.(ClinicalTrials.gov 識別番号:NCT00115479)