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September 14, 2006 Vol. 355 No. 11

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再発性多発性硬化症に対する経口フィンゴリモド(FTY720)
Oral Fingolimod(FTY720)for Relapsing Multiple Sclerosis

L. Kappos and Others

背景

フィンゴリモド(fingolimod;FTY720)は,再発性多発性硬化症の治療薬として治験中の新規経口免疫調節薬である.

方 法

281 例の患者を,経口フィンゴリモド 1.25 mg,5.0 mg,またはプラセボの 1 日 1 回投与に無作為に割り付け,MRI および臨床評価により 6 ヵ月間追跡調査した(主試験,0~6 ヵ月).主要エンドポイントは,6 ヵ月間毎月撮影した T1 強調 MRI 画像上のガドリニウム増強病変の総数とした.治験医師ならびに患者が投与割付けについて知らないまま行った延長試験(7~12 ヵ月)では,プラセボ投与群の患者を,フィンゴリモドの 2 用量のいずれかに再度無作為に割り付けた.

結 果

計 255 例が主試験を完了した.MRI 上のガドリニウム増強病変の総数の中央値は,フィンゴリモド 1.25 mg 群(1 病変,P<0.001)と 5.0 mg 群(3 病変,P=0.006)のほうが,プラセボ群(5 病変)よりも少なかった.年間再発率は,プラセボ群で 0.77 であったのに対し,フィンゴリモド 1.25 mg 群では 0.35(P=0.009),5.0 mg 群では 0.36(P=0.01)であった.延長試験を終了した 227 例については,ガドリニウム増強病変数ならびに再発率は,フィンゴリモド投与を継続して受けた群で依然として低く,また,プラセボからフィンゴリモドへ変更した患者では両数値とも減少した.有害事象には,鼻咽頭炎,呼吸困難,頭痛,下痢,悪心などがあった.無症候性の ALT 値上昇は,フィンゴリモド群に高頻度に認められた(10~12%,これに対しプラセボ群では 1%).5.0 mg 投与群では後頭葉の可逆性の脳症症候群(posterior reversible encephalopathy syndrome;PRES)が 1 例発生した.フィンゴリモドは,投与初期における心拍数の低下,ならびに 1 秒量の中等度の低下とも関連していた.

結 論

有効性を検証する proof-of-concept 試験において,フィンゴリモドにより,多発性硬化症患者の MRI で検出される病変数ならびに臨床的疾患活動度が減少した.より大規模かつ長期的な試験での評価が必要である.(Clinicaltrials.gov 番号:NCT00333138 [主試験],NCT00235430 [延長試験])

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 355 : 1124 - 40. )