September 21, 2006 Vol. 355 No. 12
急性心筋梗塞における骨髄単核球の冠動脈内注入
Intracoronary Injection of Mononuclear Bone Marrow Cells in Acute Myocardial Infarction
K. Lunde and Others
これまでの研究から,心筋梗塞の急性期に自己の骨髄細胞(BMC)を冠動脈内に注入すると,その後左室機能が改善することが示されている.われわれは,この治療法の効果をさらに検討するため,無作為化比較試験をデザインした.
経皮的冠動脈インターベンションを受けた ST 上昇型急性前壁心筋梗塞患者を,自己骨髄単核球を冠動脈内に注入する群,または骨髄吸引も偽注射も実施しない対照群に無作為に割り付けた.左室機能は,ベースライン時の心電図同期単光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)および心エコー検査,心筋梗塞から 2~3 週間後の磁気共鳴画像法(MRI)により評価した.これらの検査を,心筋梗塞から 6 ヵ月後に再度実施した.エンドポイントは,左室駆出率(LVEF),拡張末期容量,梗塞範囲の変化とした.
骨髄単核球移植に割り付けた患者 50 例のうち,47 例が心筋梗塞から中央値で 6 日後に骨髄単核球の冠動脈内注入を受けた.対照群の患者は 50 例とした.全患者に対して SPECT を用いて測定した,ベースラインと心筋梗塞から 6 ヵ月後の LVEF の平均値(±SD)の差は,7.6±10.4 パーセントポイントであった.LVEF の変化に対する骨髄単核球移植の効果は,SPECT では 0.6 パーセントポイントの上昇(95%信頼区間 [CI] -3.4~4.6,P=0.77),心エコー検査では 0.6 パーセントポイントの上昇(95% CI -2.6~3.8,P=0.70),MRI では 3.0 パーセントポイントの低下(95% CI 0.1~-6.1,P=0.054)であった.両群間で左室拡張末期容量と梗塞範囲の変化に有意差は認められず,有害事象の発現率も同等であった.
この試験で用いた手法では,自己骨髄単核球の冠動脈内注入に,左室機能全般に対する効果は認められなかった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00199823)