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November 9, 2006 Vol. 355 No. 19

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腎移植におけるウサギ抗胸腺細胞グロブリンとバシリキシマブの比較
Rabbit Antithymocyte Globulin versus Basiliximab in Renal Transplantation

D.C. Brennan and Others

背景

導入療法は,移植後の急性拒絶反応と移植後腎機能障害(delayed graft function)の発生頻度を低下させる.ウサギ抗胸腺細胞ポリクローナル抗体と,インターロイキン 2 受容体に対するモノクローナル抗体バシリキシマブは,導入療法にもっともよく用いられる.

方 法

この前向き無作為化国際研究では,死体ドナーから腎移植を受けた,急性拒絶反応や移植後腎機能障害のリスクが高い患者を対象に,抗胸腺細胞グロブリンとバシリキシマブの短期間投与を比較した.患者にシクロスポリン,ミコフェノール酸モフェチル,プレドニゾンを投与し,ウサギ抗胸腺細胞グロブリン(1.5 mg/kg 体重/日,141 例)を移植時(0 日目)と 1~4 日目に投与する群と,バシリキシマブ(20 mg,137 例)を 0 日目と 4 日目に投与する群に,無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,急性拒絶反応,移植後腎機能障害,移植腎廃絶,死亡の複合とした.

結 果

12 ヵ月後の複合エンドポイントの発生率は,両群で同程度であった(P=0.34).抗胸腺細胞グロブリン群では,バシリキシマブ群よりも,急性拒絶反応の発生率(15.6% 対 25.5%,P=0.02)および抗体治療を必要とする急性拒絶反応の発生率(1.4% 対 8.0%,P=0.005)が低かった.抗胸腺細胞グロブリン群とバシリキシマブ群で,移植腎廃絶(それぞれ 9.2%,10.2%),移植後腎機能障害(40.4%,44.5%),死亡(4.3%,4.4%)の発生率は同程度であった.また,すべての有害事象,重篤な有害事象,癌の発生率も両群で同程度であったが,抗胸腺細胞グロブリン群では感染症の発生率が高く(85.8% 対 75.2%,P=0.03),サイトメガロウイルス感染症の発生率は低かった(7.8% 対 17.5%,P=0.02).

結 論

死体ドナーから腎移植を受けた,急性拒絶反応や移植後腎機能障害のリスクが高い患者では,抗胸腺細胞グロブリンを 5 日間投与する導入療法により,バシリキシマブ投与と比べて急性拒絶反応の発生率と重症度が低下したが,移植後腎機能障害の発生率は低下しなかった.患者の生存期間と移植腎の生着期間は,両群で同程度であった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00235300)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 355 : 1967 - 77. )