November 30, 2006 Vol. 355 No. 22
倫理委員会委員と企業との金銭的関係
Financial Relationships between Institutional Review Board Members and Industry
E.G. Campbell and Others
学術機関の倫理委員会(IRB)の委員と企業とのあいだの金銭的関係について,その性質,程度,ならびに影響はほとんど明らかになっていない.われわれは,そのような関係について IRB 委員を対象に調査を行った.
100 の学術機関における IRB 委員 893 人の無作為標本を調査した(回答率 67.2%).質問票の内容は,委員と企業との金銭的関係に焦点を当てた(例:雇用,取締役会への所属,顧問料,著作権使用料の受領,有給の講演).
IRB 委員の 36%が,過去 1 年間に少なくとも 1 社と関係をもっていたことが明らかになった.回答者のうち,85.5%は,ほかの IRB 委員が企業と関係をもつことによって,IRB 関連の決定に不適切な影響があったとはまったく思わないと回答した.また,11.9%はめったに影響しないと思うと回答し,2.4%はときどき影響することがあると思う,0.2%は頻繁に影響すると思うと回答した.回答者 78 人(15.1%)は,過去 1 年間に,自分の関係している企業やその競合企業から資金援助を受けた研究計画書が,少なくとも 1 つは IRB のもとに提出されたと報告した(その両者ともに利害の対立が考えられた).これら 78 人の委員のうち(62 人は投票権のある委員,16 人は投票権のない委員),57.7%は,IRB 役員に対して常に企業との関係を常に IRB 役員に公表すると回答した.また,7.7%はときどき公表すると回答し,11.5%はめったに公表しないと回答した.23.1%は一度も公表したことがないと回答した.利害の対立を報告した投票権のある委員 62 人のうち,64.5%はその研究計画書に決して投票しないと回答し,4.8%はめったに投票しないと回答した.また,11.3%はときどき投票すると回答し,19.4%は常に投票すると回答した.ほとんどの回答者は,企業と仕事をしたことがある IRB 委員の意見が,企業から資金援助を受けた研究計画書を審査するさいに有益であると報告した.
IRB 委員と企業との関係はよくみられるものであり,委員は,自身と金銭的関係のある企業から資金援助を受けた研究計画書に関する決定に関与することもある.企業との関係から生じる利害の対立に対処するための適切な方法があることを確認するために,現在の規制や政策を検討すべきである.