August 31, 2006 Vol. 355 No. 9
複数の遺伝的系統のウイルスと関連したマールブルグ出血熱
Marburg Hemorrhagic Fever Associated with Multiple Genetic Lineages of Virus
D.G. Bausch and Others
マールブルグ出血熱の集団発生は,1998 年 10 月にコンゴ民主共和国北東部の金鉱山の村で最初に観察された.
マールブルグ出血熱の集団発生について,1999 年の 5 月と 10 月にとくに集中的に調査した.散発例とヒトからヒトへの感染の短い連鎖は,2000 年 9 月まで発生し続けた.疑い例は症例定義に基づいて同定した.症例は,血中のウイルス抗原および核酸の検出,細胞培養,抗体反応,ならびに免疫組織化学法によって確認した.
計 154 例(48 例は検査で確認された症例,106 例は疑い例)が同定された(致死率 83%).症例の 52%は,鉱山労働者の若い男性であった.これらの男性鉱山労働者の感染者のうち,他の感染者と接触したと報告したのは 27%のみであったのに対し,鉱山労働者以外の患者では,67%が他の感染者との接触を報告した(P<0.001).感染した鉱山労働者のほとんど(94%)は,地下鉱山で働いていた.集団発生の終了は,排水ポンプの故障により鉱山が浸水した時期と同時期であった.集団に複数回の感染導入が起ったことを示す疫学的証拠は,集団発生期間中に流行したウイルスに,少なくとも 9 種の遺伝的に異なる系統が検出されたことで実証された.
マールブルグ出血熱は,非常に致死率が高いと考えられる.ウイルスの複数の遺伝的変異体が同定されたことから,集団へのウイルスの継続的導入により,この集団発生が持続することとなった.この知見から,マールブルグウイルスの保有宿主が洞窟や鉱山,あるいはそれに類似した環境に生息していることが示唆される.