September 7, 2006 Vol. 355 No. 10
非小細胞肺癌における ERCC1 による DNA 修復とシスプラチンベースの補助化学療法
DNA Repair by ERCC1 in Non-Small-Cell Lung Cancer and Cisplatin-Based Adjuvant Chemotherapy
K.A. Olaussen and Others
シスプラチンベースの補助化学療法は,非小細胞肺癌を完全切除した患者の生存率を向上させるが,化学療法の利益について,妥当性が確認された臨床的予測因子や生物学的予測因子はない.
免疫組織化学法を用いて,非小細胞肺癌の手術標本における除去修復交差相補群 1(excision repair cross-complementation group 1;ERCC1)蛋白の発現を測定した.患者は,国際肺癌補助療法試験(International Adjuvant Lung Cancer Trial)に登録されていたため,シスプラチンベースの補助化学療法が生存に与える効果を,ERCC1 の発現に基づいて比較することが可能であった.臨床的因子と病理学的因子で補正した Cox モデルを用いて,全生存を検討した.
ERCC1 の発現は,腫瘍 761 個のうち 335 個が陽性(44%),426 個が陰性(56%)であった.シスプラチンベースの補助化学療法による利益は,ERCC1 が存在しないことと関連していた(相互作用検定の P=0.009).補助化学療法により,経過観察と比較して,ERCC1 の発現が陰性であった腫瘍の患者の生存が有意に延長したが(死亡に対する補正ハザード比 0.65,95%信頼区間 [CI] 0.50~0.86,P=0.002),ERCC1 の発現が陽性であった患者では延長しなかった(死亡に対する補正ハザード比 1.14,95% CI 0.84~1.55,P=0.40).補助化学療法を受けていない患者のうち,ERCC1 の発現が陽性であった患者は,陰性であった患者よりも長く生存した(死亡に対する補正ハザード比 0.66,95% CI 0.49~0.90,P=0.009).
非小細胞肺癌を完全切除し,腫瘍の ERCC1 発現が陰性の患者では,シスプラチンベースの補助化学療法は有効であると考えられるが,ERCC1 発現が陽性の患者では有効ではないと考えられる.