March 15, 2007 Vol. 356 No. 11
水痘に対するワクチン免疫の経時的消失
Loss of Vaccine-Induced Immunity to Varicella over Time
S.S. Chaves and Others
米国では,1995 年の水痘ワクチン皆接種の導入により,水痘関連の障害と死亡が大幅に低下している.しかし,ワクチンによって獲得された免疫が経時的に低下するかどうかは不明である.免疫が低下すれば,後に感受性が高まることが考えられる.そしてそのころには,重篤な合併症を発症するリスクが小児期よりも高いおそれがある.
被験者 350,000 例の指標集団から得た 10 年間(1995~2004 年)の能動的サーベイランスデータを調査し,水痘の breakthrough 症例(ワクチン接種後 42 日以降の皮疹の発症)の重症度と発生率が,ワクチン接種後の時間経過とともに上昇するかどうかを検討した.多変量ロジスティック回帰分析を用いて,疾患発症の年(暦年),被験者の発症年齢,ワクチン接種年齢について補正を行った.
サーベイランス期間中,計 11,356 例の水痘発症が報告された.そのうち 1,080 例(9.5%)は breakthrough 症例であった.5 年以上前にワクチン接種を受けた 8~12 歳の小児は,5 年以内にワクチン接種を受けた小児と比べて,中等度または重度の疾患を発症する確率が有意に高かった(リスク比 2.6,95%信頼区間 [CI] 1.2~5.8).breakthrough 症例の年間発生率はワクチン接種後の時間経過とともに有意に上昇し,ワクチン接種後 1 年以内には 1.6 例/1,000 人・年(95% CI 1.2~2.0)であったのに対し,5 年目には 9.0 例/1,000 人・年(95% CI 6.9~11.7),9 年目には 58.2 例/1,000 人・年(95% CI 36.0~94.0)となった.
現在,2 回目の水痘ワクチン接種が全小児を対象に推奨されているが,この接種により,1 回目のワクチン接種での免疫不成立(primary vaccine failure)や,ワクチンによって獲得された免疫の低下に対する防護を高められる可能性がある.