March 29, 2007 Vol. 356 No. 13
特発性肺線維症の家族におけるテロメラーゼ変異
Telomerase Mutations in Families with Idiopathic Pulmonary Fibrosis
M.Y. Armanios and Others
特発性肺線維症は進行性であり,死にいたることが多い.この疾患が家族内集積する原因は不明である.テロメラーゼ逆転写酵素をコードする hTERT,およびテロメラーゼ RNA をコードする hTR における生殖細胞系列変異は,常染色体優性先天性角化異常症(dyskeratosis congenita)を引き起すが,この疾患は,再生不良性貧血や肺線維症による早期死亡と関連する,まれな遺伝性疾患である.
家族性特発性肺線維症はテロメアの短縮が原因となっている可能性があるという仮説を検証するため,hTERT と hTR の変異について,ヴァンダービルト家族性肺線維症登録(Vanderbilt Familial Pulmonary Fibrosis Registry)に登録されている発端者 73 例をスクリーニングした.
6 例(8%)に hTERT または hTR のヘテロ接合変異が認められ,変異テロメラーゼによってテロメアの短縮が起きていた.変異テロメアーゼを有する無症候性の被験者のテロメアも短く,この疾患のリスクを有する可能性が示唆された.これら 6 家族のうち5 家族では,先天性角化異常症の典型的特徴はまったく認められなかった.
テロメラーゼの構成要素をコードする遺伝子の変異は,家族性特発性肺線維症として発現する可能性がある.今回の所見は,テロメアの短縮をきたす経路がこの疾患の発症機序に関与するという見解を支持している.