April 26, 2007 Vol. 356 No. 17
双極性うつ病に対する抗うつ薬の補助的投与の有効性
Effectiveness of Adjunctive Antidepressant Treatment for Bipolar Depression
G.S. Sachs and Others
抑うつエピソードは,双極性障害患者における生活機能障害の原因としてもっとも多いものである.双極性障害(双極性うつ病)に関連した抑うつエピソードに対する標準的抗うつ薬の有効性と安全性については,十分な研究が行われていない.この試験は,補助的な抗うつ薬の投与が,躁病のリスクを増加させずに双極性うつ病の症状を軽減させるか否かを検討するためにデザインされた.
この二重盲検プラセボ対照試験では,双極性うつ病の患者を,気分安定薬+補助的抗うつ薬,または気分安定薬+マッチさせたプラセボによる最長 26 週間の治療に,ルーチンな臨床ケアへの一般化が可能な状態で無作為に割り付けた.すべての追跡診療において,『精神疾患の分類と診断の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第 4 版』の構造化面接(SCID-IV)の気分障害のモジュールから一部を修正した,標準化された臨床的モニタリング調査票を用いた.主要転帰は,各治療群において持続的回復(気分正常が 8 週続く状態)の基準を満たした患者の割合とした.また,有効性に関する副次的転帰と,治療下で出現する感情の交代(治療初期における躁あるいは軽躁への転換)の割合についても検討した.
持続的回復は,気分安定薬+補助的抗うつ薬の投与を受けた患者 179 例中 42 例(23.5%)でみられ,気分安定薬+マッチさせたプラセボの投与を受けた患者では 187 例中 51 例(27.3%)にみられた(P=0.40).副次的転帰については,気分安定薬+プラセボ投与群に有利な傾向が,有意ではないもののわずかに観察された.治療下で感情の交代が出現した割合は,両群で同等であった.
標準的抗うつ薬の補助的な使用は,気分安定薬の使用と比較したところ,有効性の増大あるいは治療下で感情の交代が出現するリスクの増加の,いずれとも関連しなかった.双極性障害に対する抗うつ薬治療の利益とリスクを十分に評価するためには,より長期のアウトカム研究を行う必要がある.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00012558)
本論文(10.1056/NEJMoa064135)は,2007 年 3 月 28 日に www.nejm.org で発表された.