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June 21, 2007 Vol. 356 No. 25

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小児期発症多発性硬化症の自然経過
Natural History of Multiple Sclerosis with Childhood Onset

C. Renoux and Others

背景

小児期発症の多発性硬化症の経過と予後については,十分に説明されていない.

方 法

多発性硬化症の欧州データベース(European Database for Multiple Sclerosis;EDMUS)ネットワークに所属する 13 施設の成人神経内科から得たデータを利用して,多発性硬化症を 16 歳以下で発症した患者 394 例のコホート集団と,16 歳以降に発症した患者 1,775 例の対照集団を同定した.初期の臨床所見,発症日,ならびに再発や二次的進行,不可逆的障害などの転帰の発生について調べた.不可逆的障害は,Kurtzke の障害度評価尺度(スコアの範囲 0~10,スコアが高いほど障害が重症であることを示す)のスコアが,4(歩行能力は制限されているが,介助あるいは休息なしに 500 m より長く歩行できる),6(身体の片側を支えられて歩行はできるが,休息せずに 100 m より長く歩行することはできない),7(壁や家具で身体を支えながら歩行できるが,休息せずに 10 m より長く歩行することはできない)の場合とした.

結 果

小児期発症多発性硬化症の患者において,発症から二次的進行開始までの期間の中央値は推定で 28 年,二次的進行に転換した時点における年齢の中央値は 41 歳であった.発症から障害スコア 4,6 および 7 への進行までの期間の中央値は,それぞれ 20.0 年,28.9 年,37.0 年であり,対応する年齢の中央値は 34.6 歳,42.2 歳,50.5 歳であった.成人期発症患者と比較して,小児期発症患者では,男性より女性が多く(女性と男性の比,2.8 対 1.8),初期に増悪・寛解を繰り返す頻度が高く(98% 対 84%),二次的進行や不可逆的障害に進行するまで約 10 年長くかかり,約 10 歳若くしてこれらの指標に達した(すべての比較で P<0.001).

結 論

小児期発症多発性硬化症の患者では,成人期発症の患者と比較して,不可逆的障害状態にいたるまでにより長い期間がかかるが,より若年でそのような状態になる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2007; 356 : 2603 - 13. )