October 11, 2007 Vol. 357 No. 15
腋窩リンパ節転移陽性乳癌における HER2 とパクリタキセルに対する反応
HER2 and Response to Paclitaxel in Node-Positive Breast Cancer
D.F. Hayes and Others
乳癌細胞中のヒト上皮成長因子受容体 2 型(HER2)の状態から,アントラサイクリンベースの補助化学療法を受ける女性患者の臨床転帰が予測できる.われわれは,補助療法における標準超過用量でのドキソルビシン投与,ドキソルビシン+シクロホスファミドによる補助化学療法後のパクリタキセル追加投与,あるいはその両者から得られる利益を,HER2 陽性により予測できると仮定した.
腋窩リンパ節転移陽性乳癌の女性 3,121 例から 1,500 例を無作為に選定した.患者は,ドキソルビシン(60,75,90 mg/m2 体表面積)+シクロホスファミド(600 mg/m2)を 4 サイクル投与後,パクリタキセル(175 mg/m2)投与または経過観察を 4 サイクル行う群へ無作為に割り付けられていた.1,500 例中 1,322 例の組織片を入手した.これらの組織標本において,HER2 を調べるため HER2 に対する CB11 モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体分析キットを用いた免疫組織化学分析を行い,蛍光 in situ ハイブリダイゼーションにより HER2 の増幅について調べた.
HER2 陽性とドキソルビシンの 60 mg/m2 超過用量投与とのあいだに交互作用は認められなかった.しかし,HER2 陽性の場合は,パクリタキセルから有意な利益が得られた.HER2 陽性とパクリタキセル追加投与との交互作用に関連する,再発に対するハザード比は 0.59(P=0.01)であった.HER2 陽性乳癌患者は,エストロゲン受容体の状態とは無関係にパクリタキセルから利益を得たが,HER2 陰性でエストロゲン受容体陽性の乳癌患者ではパクリタキセルの利益は認められなかった.
腋窩リンパ節転移陽性乳癌において,乳癌による HER2 の発現,増幅,またはその両方は,エストロゲン受容体の状態とは無関係に,ドキソルビシン(<60 mg/m2)+シクロホスファミドによる補助療法後のパクリタキセル追加投与から得られる利益と関連している.HER2 陰性,エストロゲン受容体陽性,腋窩リンパ節転移陽性の患者は,ドキソルビシン+シクロホスファミドによる補助化学療法後のパクリタキセル投与から,ほとんど利益を得られない可能性がある.