結腸直腸癌のアジュバント療法におけるロフェコキシブと心血管有害事象
Rofecoxib and Cardiovascular Adverse Events in Adjuvant Treatment of Colorectal Cancer
D.J. Kerr and Others
選択的シクロオキシゲナーゼ阻害薬は癌の進行を遅らせる可能性があるが,血栓傾向を促進させる可能性がある.われわれは,結腸直腸癌の再発率を低下させるためにロフェコキシブ投与を受けている患者の心血管有害事象に関して報告する.
ロフェコキシブに関する無作為化プラセボ対照試験に参加した II 期または III 期の結腸直腸癌患者 2,434 例について,心血管系の血栓性イベントである重篤な有害事象をすべて検討した.ロフェコキシブの投与量は 25 mg/日とし,治癒的と考えられる腫瘍切除術と,適応に応じた化学療法または放射線療法後に開始した.試験は,ロフェコキシブが世界中の市場から撤退したため早期に終了した.可能性のある持続リスクを評価するために,試験終了後 24 ヵ月までに報告された心血管系血栓性イベントを検討した.
実薬治療期間の中央値は 7.4 ヵ月間であった.ロフェコキシブ投与を受けた患者 1,167 例と,プラセボ投与を受けた患者 1,160 例はよくマッチしており,追跡調査期間の中央値はそれぞれ 33.0 ヵ月(四分位範囲 27.6~40.1)と 33.4 ヵ月(四分位範囲 27.7~40.4)であった.確認された 23 件の心血管系血栓性イベントのうち,16 件がロフェコキシブ群で治療期間中あるいは治療期間後 14 日以内に発生しており,推定相対リスクは 2.66 であった(Cox 比例ハザードモデルより,95%信頼区間 [CI] 1.03~6.86,P=0.04).Antiplatelet Trialistsユ Collaboration エンドポイント(心血管系の原因による死亡,出血による死亡,原因不明の死亡;非致死的心筋梗塞;非致死的な脳梗塞ならびに脳出血の複合発生率)の解析では,非補正相対リスクは 1.60(95% CI 0.57~4.51,P=0.37)であった.さらに 14 件の心血管系血栓性イベント(うち 6 件はロフェコキシブ群)が試験終了後 2 年以内に報告され,全体の非補正相対リスクは 1.50(95% CI 0.76~2.94,P= 0.24)であった.治療期間中あるいは治療期間後 14 日以内にロフェコキシブ群の 4 例とプラセボ群の 2 例が血栓症により死亡し,追跡期間中にロフェコキシブ群の 1 例とプラセボ群の 5 例が心血管イベントにより死亡した.
ロフェコキシブ療法は,中央値 7.4 ヵ月間の試験的治療を受けた患者において,心血管系の有害事象の頻度増加と関連していた.(Current Controlled Trials 番号:ISRCTN98278138)