ST 上昇型心筋梗塞患者に対する facilitated PCI
Facilitated PCI in Patients with ST-Elevation Myocardial Infarction
S.G. Ellis and Others
ST 上昇型急性心筋梗塞の患者に対し,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に先行して,アブシキシマブ(abciximab)+半量のレテプラーゼ(reteplase)による治療(併用 facilitated PCI),またはアブシキシマブ単独による治療(アブシキシマブ facilitated PCI)を早期に行うことにより,primary PCI で施行直前に行うアブシキシマブ投与に比べて,転帰が改善するという仮説を立てた.
この国際的二重盲検プラセボ対照試験では,症状発現後 6 時間以内に受診した ST 上昇型急性心筋梗塞の患者を,併用 facilitated PCI,アブシキシマブ facilitated PCI,primary PCI のいずれかに無作為に割り付けた.患者全例に対し,PCI 施行前に未分画ヘパリンまたはエノキサパリンを投与し,PCI 施行後にアブシキシマブの静脈内投与を 12 時間行った.主要エンドポイントは,全死因死亡,無作為化後 48 時間以降に生じた心室細動,心原性ショック,無作為化後 90 日間に生じたうっ血性心不全の複合とした.
計 2,452 例を各治療群に無作為に割り付けた.ST 上昇が早期に消失した患者は,併用 facilitated PCI 群(43.9%)のほうが,アブシキシマブ facilitated PCI 群(33.1%),primary PCI 群(31.0%)よりも有意に多かった(P=0.01,P=0.003).主要エンドポイントは,併用 facilitated PCI 群の 9.8%,アブシキシマブ facilitated PCI 群の 10.5%,primary PCI 群の 10.7%で発生した(P=0.55).90 日死亡率はそれぞれ,5.2%,5.5%,4.5%であった(P=0.49).
PCI 施行時に投与されるアブシキシマブと比較して,レテプラーゼ+アブシキシマブ,またはアブシキシマブ単独により PCI の前治療を行っても,ST 上昇型心筋梗塞患者の臨床転帰は有意には改善しなかった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00046228)